翻訳の世界 1992年10月号 若島正「改訳したい10大翻訳」

昔、フィリップ・ロスやナボコフの翻訳で知られる大津栄一郎のウィキペディアのページを見てみたら、「ナボコフの『賜物』の翻訳については若島正から『翻訳の世界』誌の「改訳したい小説ベスト10」で多数の誤訳を指摘されたため、「若島正氏に反論する」を…

小説家で打線を組んでみた

「〇〇で打線を組んでみた」という、5ch(特になんj)でよく使われているネタがある。野球を知らない人には、細かく説明しても無駄だろうから、本質的なことだけをかいつまんで言うと、野球のルールとセオリーを異分野に適用し、その中でどれだけ突っ込まれ…

ラブホテルのスーパーヒロイン⑧

それから三日後の月曜日。朝、会社に行こうとマンションの外に出たら、喉がいがいがし始めた。軽傷だろうと高を括っていたら、仕事が終わる頃には身体がだるく感じるほどに悪化していた。それでも翌日は出社したが、水曜日になるとベッドから起き上がるのも…

ラブホテルのスーパーヒロイン⑦

当初の過度に集中していた状態からややだれてきた時、扉がゆっくりと開いた。そこには、バットウーマンの衣装を着た彼女がいた。変身前の彼女とはまったく別人だった。天使であり悪魔である女。俺が求めていたのはこれだ! 俺は咄嗟に光線銃を撃った。ちゅる…

ラブホテルのスーパーヒロイン⑥

結局、風呂についてはよくわからないまま当日を迎えた。家族には、「映画を見てくる」と告げ、家を出た。今日は、朝から性的熱狂で脳が沸騰していた。なぜなら、この日のために月曜日からオナ禁していたからだ(日曜日には最後の晩餐とばかりに、いつもより…

ラブホテルのスーパーヒロイン⑤

シナリオを書き上げた後、ホームページでヒカリの予定を確認したら、二十五日出勤となっていたので、ひとまず安心した。以前予約した風俗店は、サイトに予約用のフォームがあったのだが、「ヒロインの檻」にはそれがなく、取り敢えず「お問い合わせ」のとこ…

ラブホテルのスーパーヒロイン④

2 実践編 私には夢がある。特撮ヒロインのコスプレをした女とセックスしたいという夢が。しかし、それを頼むための彼女はいないし、コスプレをメインにしたいわゆる「イメクラ」と呼ばれる風俗も、女子高生とか女医とかOLとかありきたりなものばかりだっ…

ラブホテルのスーパーヒロイン③

レッド・ルーフの作品を初めて購入したのは、多分高校二年ぐらいだっただろうか。それまでは、サイトのサンプルとかYouTubeやエロサイトに違法アップロードされた数分程度の断片しか観られない、食べ飽きたオカズを強引に消化するような不満足な日々を過ごし…

ラブホテルのスーパーヒロイン②

家にパソコン(ウィンドウズ95)とインターネットが導入されたのは、俺が五年生の時で、祖母が仕事でeメールを使うためだった。当時のダイヤルアップ接続は、定額制ではなく、速度もカタツムリのように低速で(おまけに、不穏な電子音まで鳴り響く)、家族…

ラブホテルのスーパーヒロイン①

──ところがねえ! どうしてもあの人に言う度胸が出ない、おかしな願いがあるんだと言っても、あんた信じてくれるかしら? ──あたし、あの人が、医療器具入れをもって、上っぱりを着て、ちょっとぐらいその上に血がついたままで、会いに来てくれればいいなあ…

マット・コリショー 爛熟した美の世界

日本では90年代にサブカルチャーの領域で、死体、犯罪、ドラッグ、過激な性表現といったものを、倫理や罪悪感から切り離し、時には肯定的にも扱う、いわゆる「悪趣味」文化というものがあった。現在、その功罪についてよく語られるようになったが、同じ時期…

藤森安和 『15才の異常者』

大江健三郎の「政治少年死す(「セヴンティーン」第二部)」は、1961年『文學界』2月号に掲載されたが、右翼の抗議にあい、出版社側が謝罪したため、2018年7月に『大江健三郎全小説3』に収録されるまで、長らく単行本未収録の封印作品となっていた。 実は、…

中上健次が選ぶ150冊

中上健次の没後出版された『現代小説の方法』という本は、彼の講演をまとめたものだが、最後におまけのような形で、「中上健次氏の本棚──物語/反物語をめぐる150冊」という章があって、中上が選んだ150冊の本のリストが載っている。元々は、1984年に、「東…

Apple Musicのひどい不具合

Apple Musicの会員になってから半年ぐらい経つが、不満なことが一杯ある。アレがあるのにコレがないみたいな、曲数についての不満も当然あったりするが、一番イライラするのは、技術的な問題だ。ちなみに、使っているiTunesのバージョンは、12.9.3.3である。…

サイモン・ブラウンド編 『幻に終わった傑作映画たち』

キューブリックの『ナポレオン』、オーソン・ウェルズの『ドン・キホーテ』、 アレハンドロ・ホドロフスキーの『デューン/砂の惑星』、デヴィッド・リンチの『ロニー・ロケット』……。完成することなく幻に終わった映画は、「幻」であるがゆえに、魅力的であ…

J・D・サリンジャー 『ハプワース16、1924年』

サリンジャーが雑誌などに発表した短編小説の中には、本人が後に単行本化するのを拒否したため、封印状態になったものがいくつかある。例えば、『ライ麦畑でつかまえて』の原型となった、「マディソン・アヴェニューのはずれでのささいな抵抗」や「ぼくはち…

板東英二 『プロ野球 知らなきゃ損する』

野球選手も人間である。人間であるからには、金・女・嫉妬といった俗世間のしがらみから簡単に逃れることはできない。いや、むしろ彼らはそういったものに、人一倍敏感にならざるをえない環境に身を置いているとも言える。オフシーズンになれば年俸が話題に…

いいね!5未満の男によるペアーズ印象記

吉原真理の『ドット・コム・ラヴァーズ』を読んだ。だいぶ前からいつか読もうと思ってタイミングを逃し続けてきたのだが、数か月前から自分がペアーズをやるようになったので、ちょうど良い機会だと思い、手を伸ばした。 『ドット・コム・ラヴァーズ』は、ア…

みにくいアヒルの子症候群

本屋にいくのがつらい。本屋に行くと、自分と同世代、もしくは年下のライターとか作家とかミュージシャンとかが華々しく活躍しているのが嫌でも目に入るからだ。そして、いつまでもくすぶっている自分が悲しくなってくる。誰かの書評とか読んで、「俺の方が…

三島由紀夫が旅行記に書かなかったこと

先月、「右翼」の三島由紀夫が初の岩波文庫入りということで、話題になった(まあ、海外の著者なら、既にエドマンド・バークとかも入っているが)。中身が旅行記だったので、特に興味もなかったが、水声社のヘンリー・ミラー・コレクション『対話・インタヴ…

作家の性癖

人が自分の性癖を意識するのは何歳ぐらいからだろうか*1。個人的な経験から言わせてもらえば、小学校にあがる前、大体五歳ぐらいの時には、変態的な「エロ」を認識していた(詳しくは「童貞と男の娘」を読んで欲しい)。頭で自分の性癖を理解していたという…

パリス・ヒルトンをディスった時のバンクシーはダサかった

バンクシーが自分の作品をオークション会場でシュレッダーにかけた事件は、わりと賛否両論だった。ハフィントン・ポストの記事にもあるように、このアクションによって、バンクシーの作品の価値は、シュレッダー以前よりも高まることになった。つまり、バン…

童貞と男の娘③

大阪を離れてから二日後の月曜日、俺は歯医者に行く予定があった。右下の奥歯の真下に、良性の腫瘍があって、それが大きくなっていないか確認するため中学生の頃から毎年レントゲンを撮りに行っているのだが、その日の朝起きると、かなり具合が悪かった。前…

童貞と男の娘②

動物園前駅から梅田駅に着くころには、ちょうどホテルのチェックインの時間が近づいていた。ホテルは阪急梅田から徒歩10分程度のビジネスホテルを予約していた。ここならエメラルドにも歩いていける。部屋は、ベッドがスペースの半分を占拠しているような狭…

童貞と男の娘①

まったく奇妙な夜だった。一日かそこらすれば、疼き出すのではないか。さまざまな心配。急いで馳けつけるアメリカン・ホスピタル。黒い葉巻をくわえたエールリッヒ博士の幻が、幾重にもダブって見えてくる。異常はないのだろうか。取り越し苦労なのだろうか…

ネルソン・オルグレンと寺山修司の出会い

ジル・クレメンツが作家たちを撮ってまとめた、『ライターズ・イメージ』という写真集を見ていたら(ちなみに、クレメンツの夫はカート・ヴォネガットで、この写真集の序文もヴォネガットが書いている)、ネルソン・オルグレンのところで、気になるものがあ…

東京電力の社員を名乗る泥棒

家に泥棒が入った。泥棒を入れたのは家族だった。 水曜日の午前11時頃、俺が会社に行っている間、家に「東京電力の検査員」を名乗る小太りの中年男がアポなしでやってきたらしい。男は作業着姿で、社員証らしきものを首から下げ、腕に腕章を巻いていた。 家…

ジュリアン・テンプル 『ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル』

ジョン・ライドンが、アメリカ・ツアー中だったセックス・ピストルズのサンフランシスコ公演で、「騙された気分はどうだい?」と観客に吐き捨て、ツアー日程が残っていたにもかかわらず、そのまま脱退したのは有名な話だ。ピストルズのライブでは、興奮した…

ウンコをもらしかけた

先週の金曜日、ウンコをもらしかけた。 家を出る直前、腹に少し違和感があって、「あ、トイレ行っとけばよかったかな」と思ったのだが、まあ大丈夫だろうと家を出、電車に乗った。最寄りが始発駅だから、乗換駅に着くまでいつも寝ているのだが、腹の中で渦潮…

遠藤周作 vs 三島由紀夫──サドを巡って──

縄張り争いというのは、あらゆる生物に共通する、最もポピュラーな戦いの一つだ。また、縄張りは、物理的な物に限らず、例えば同じ分野の研究者同士が途轍もなく仲が悪かったりする。作家にしても、関心領域が近いと、争いに発展しやすい。 ただし、作家同士…