板東英二 『プロ野球 知らなきゃ損する』

野球選手も人間である。人間であるからには、金・女・嫉妬といった俗世間のしがらみから簡単に逃れることはできない。いや、むしろ彼らはそういったものに、人一倍敏感にならざるをえない環境に身を置いているとも言える。オフシーズンになれば年俸が話題に…

いいね!5未満の男によるペアーズ印象記

吉原真理の『ドット・コム・ラヴァーズ』を読んだ。だいぶ前からいつか読もうと思ってタイミングを逃し続けてきたのだが、数か月前から自分がペアーズをやるようになったので、ちょうど良い機会だと思い、手を伸ばしたのだ。 『ドット・コム・ラヴァーズ』は…

みにくいアヒルの子症候群

本屋にいくのがつらい。本屋に行くと、自分と同世代、もしくは年下のライターとか作家とかミュージシャンとかが華々しく活躍しているのが嫌でも目に入るからだ。そして、いつまでもくすぶっている自分が悲しくなってくる。誰かの書評とか読んで、「俺の方が…

三島由紀夫が旅行記に書かなかったこと

先月、「右翼」の三島由紀夫が初の岩波文庫入りということで、話題になった(まあ、海外の著者なら、既にエドマンド・バークとかも入っているが)。中身が旅行記だったので、特に興味もなかったが、水声社のヘンリー・ミラー・コレクション『対話・インタヴ…

作家の性癖

人が自分の性癖を意識するのは何歳ぐらいからだろうか。個人的な経験から言わせてもらえば、小学校にあがる前、大体五歳ぐらいの時には、変態的な「エロ」を認識していた(詳しくは「童貞と男の娘」を読んで欲しい)。頭で自分の性癖を理解していたというよ…

パリス・ヒルトンをディスった時のバンクシーはダサかった

バンクシーが自分の作品をオークション会場でシュレッダーにかけた事件は、わりと賛否両論だった。ハフィントン・ポストの記事にもあるように、このアクションによって、バンクシーの作品の価値は、シュレッダー以前よりも高まることになった。つまり、バン…

童貞と男の娘③

大阪を離れてから二日後の月曜日、俺は歯医者に行く予定があった。右下の奥歯の真下に、良性の腫瘍があって、それが大きくなっていないか確認するため中学生の頃から毎年レントゲンを撮りに行っているのだが、その日の朝起きると、かなり具合が悪かった。前…

童貞と男の娘②

動物園前駅から梅田駅に着くころには、ちょうどホテルのチェックインの時間が近づいていた。ホテルは阪急梅田から徒歩10分程度のビジネスホテルを予約していた。ここならエメラルドにも歩いていける。部屋は、ベッドがスペースの半分を占拠しているような狭…

童貞と男の娘①

まったく奇妙な夜だった。一日かそこらすれば、疼き出すのではないか。さまざまな心配。急いで馳けつけるアメリカン・ホスピタル。黒い葉巻をくわえたエールリッヒ博士の幻が、幾重にもダブって見えてくる。異常はないのだろうか。取り越し苦労なのだろうか…

ネルソン・オルグレンと寺山修司の出会い

ジル・クレメンツが作家たちを撮ってまとめた、『ライターズ・イメージ』という写真集を見ていたら(ちなみに、クレメンツの夫はカート・ヴォネガットで、この写真集の序文もヴォネガットが書いている)、ネルソン・オルグレンのところで、気になるものがあ…

東京電力の社員を名乗る泥棒

家に泥棒が入った。泥棒を入れたのは家族だった。 水曜日の午前11時頃、俺が会社に行っている間、家に「東京電力の検査員」を名乗る小太りの中年男がアポなしでやってきたらしい。男は作業着姿で、社員証らしきものを首から下げ、腕に腕章を巻いていた。 家…

ジュリアン・テンプル 『ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル』

ジョン・ライドンが、アメリカ・ツアー中だったセックス・ピストルズのサンフランシスコ公演で、「騙された気分はどうだい?」と観客に吐き捨て、ツアー日程が残っていたにもかかわらず、そのまま脱退したのは有名な話だ。ピストルズのライブでは、興奮した…

ウンコをもらしかけた

先週の金曜日、ウンコをもらしかけた。 家を出る直前、腹に少し違和感があって、「あ、トイレ行っとけばよかったかな」と思ったのだが、まあ大丈夫だろうと家を出、電車に乗った。最寄りが始発駅だから、乗換駅に着くまでいつも寝ているのだが、腹の中で渦潮…

遠藤周作 vs 三島由紀夫──サドを巡って──

縄張り争いというのは、あらゆる生物に共通する、最もポピュラーな戦いの一つだ。また、縄張りは、物理的な物に限らず、例えば同じ分野の研究者同士が途轍もなく仲が悪かったりする。作家にしても、関心領域が近いと、争いに発展しやすい。 ただし、作家同士…

中上健次と「文壇」

「文壇」というものを体現していたのは中上健次が最後だ、ということはよく言われる。それは、中上が俗に文壇バーと呼ばれる場所で大いに暴れ、そして、その行為自体が一つの「批評」として受け止められていたからだ。角川書店時代に中上と付き合いのあった…

小林秀雄の暴力性

昭和の文壇で作家に最も恐れられた批評家といえば、小林秀雄だろう。とは言っても、彼について書かれた様々なエピソードを読む限り、その恐ろしさは、あの論理の飛躍した文体の持つカリスマ性だけでなく、もっと直接的な「暴力」によっても支えられていたの…

ソール・ベロー 『ラヴェルスタイン』

ソール・ベローの小説は大学時代に『その日をつかめ』を読んで感動し、以来翻訳されたものは全て読んだが、『その日をつかめ』以外はどれも面白いとは思えなかった。ベローの小説のおおまかな特徴として、衒学的な比喩を駆使した文体、形而上学的考察、知的…

ペアーズで最も女性人気のある作家は誰だ!

先日、あまりにもモテないのでとうとうペアーズに登録してみた。実際に使うのはもう少し先にしようと思っているが(プロフィール使える他撮りと金がない……)、無料会員でもコミュニティは覗けるので、偵察がてら色々見てみた。ちなみに、ペアーズをやってい…

Amazonに登録されていない角川文庫の海外文学

角川文庫のイメージと言えば、やはり「読んでから見るか 見てから読むか」というキャッチコピーに代表されるように、『人間の証明』、『戦国自衛隊』などの、映画と連動した作品が最初に思い浮かぶ。今でもこの路線は続いていて、東野圭吾とかが森村誠一的な…

高崎俊夫 『祝祭の日々』

インターネットで蓮實重彦とかやや古めの映画・小説について調べている時に、よく出てくるページがあって、それが高崎俊夫の「映画アットランダム」だった。多分、最初に目にしたのは、「スーザン・ソンタグと蓮實重彦の微妙な対話」で、恐らく「映画アット…

作家の写真を読む

俺はミーハーな文学好きなので、小説だけでなく、それを書いた作家の風貌にも興味がある。しかし、出回っている写真の多くは、晩年に撮られたものだったり、パブリック・イメージを意識したものだったりで、飽き足りないものがある。例えば、岩波書店から出…

『直木賞のすべて』と選ぶ「文学賞受賞作あれこれ」選手権

サイト「直木賞のすべて」や『直木賞物語』で知られるP.L.B.こと川口則弘さんが審査員を務めた、「文学賞の受賞作をレビューする」というテーマのエッセイコンテストで落選しましたが、「選外になったものの記憶に残ったもの」という欄で川口さんからコメン…

図書館通い

図書館をよく使う。金がないからだ。大学時代は中身を見ずに本を買うこともあったが、最近は図書館で一度借りて、内容を確認してから買うことにしている。それでも中々買えないから、多分本好きの大学生よりも、本を持っていない。余談だが、このブログは全…

スチュアート・ケリー 『ロストブックス』

1922年、ヘミングウェイの妻ハドリーは、スイスにいるヘミングウェイに会いに行く途中、スーツケースを盗まれた。このエピソードが有名なのは、その中に、大量の未発表原稿とそのコピーが入っていたからだ。ヘミングウェイの習作は永遠に失われることに…

独断と絶対的な自信を持って選ぶ珍伝記ベスト3

俺は伝記を読むのが好きだ。特に文学者の伝記をよく読む。 伝記というのは、そんなにはずれを引くことのないジャンルだと思う。十分な知識を持っていないと書けない分野だし、抽象的な事柄をほとんど取り扱わないから、スラスラと読んでいける。 逆に、つま…

文學界 1967年8月号 作家が選んだ戦後文芸評論ベスト20

『文學界』1967年8月号では、「作家が選んだ戦後文芸評論ベスト20」という特集を組んでいる。初めに、磯田光一司会で、野間宏、中村真一郎、小島信夫、大江健三郎らによる座談会(「作家にとって批評とは何か」)があり、その結びとして、読者に勧める文芸…

群像 1974年1月号 批評家33氏による戦後文学10選

『群像』1974年1月号では、「戦後文学」に関する特集が組まれており、「批評家33氏による戦後文学10選」というアンケートと、秋山駿・磯田光一・柄谷行人・川村二郎・上田三四二らによる座談会「戦後文学を再検討する」という企画が組まれている。ここに…

肉体的体力と精神的体力

一般的に「体力がある」といえば、肉体的な体力のことを指すだろう。しかし、僕は、「肉体的体力」の他に「精神的体力」というのもあると思う。 例えば、大勢の人の前で1時間発表しなければならないとする。たった1時間のことで、運動のように肉体を酷使し…

リバティーンズとキプリング

リバティーンズの「ガンガ・ディン」という曲は、キプリングの同名の戦争詩からとられている。ガンガ・ディンはインド人の水運びで、普段はイギリス人の兵隊からこき使われているが、戦場で彼らの一人を助けた後、流れ弾に当たって死ぬ。それを見た兵隊が、"…

群像 1996年10月号 私の選ぶ戦後文学ベスト3

『群像』1996年10月号は、「創刊五十周年記念号」ということで、大江健三郎×柄谷行人、江藤淳×秋山駿の対談や、木下順二、小田切秀雄のエッセイが載っているいる。 アンケートでは、「私の選ぶ戦後文学ベスト3」というのが企画されていて、選者は批評…