ジュリアン・テンプル 『ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル』

ジョン・ライドンが、アメリカ・ツアー中だったセックス・ピストルズのサンフランシスコ公演で、「騙された気分はどうだい?」と観客に吐き捨て、ツアー日程が残っていたにもかかわらず、そのまま脱退したのは有名な話だ。ピストルズのライブでは、興奮した…

ウンコをもらしかけた

先週の金曜日、ウンコをもらしかけた。 家を出る直前、腹に少し違和感があって、「あ、トイレ行っとけばよかったかな」と思ったのだが、まあ大丈夫だろうと家を出、電車に乗った。最寄りが始発駅だから、乗換駅に着くまでいつも寝ているのだが、腹の中で渦潮…

遠藤周作 vs 三島由紀夫──サドを巡って──

縄張り争いというのは、あらゆる生物に共通する、最もポピュラーな戦いの一つだ。また、縄張りは、物理的な物に限らず、例えば同じ分野の研究者同士が途轍もなく仲が悪かったりする。作家にしても、関心領域が近いと、争いに発展しやすい。 ただし、作家同士…

中上健次と「文壇」

「文壇」というものを体現していたのは中上健次が最後だ、ということはよく言われる。それは、中上が俗に文壇バーと呼ばれる場所で大いに暴れ、そして、その行為自体が一つの「批評」として受け止められていたからだ。角川書店時代に中上と付き合いのあった…

小林秀雄の暴力性

昭和の文壇で作家に最も恐れられた批評家といえば、小林秀雄だろう。とは言っても、彼について書かれた様々なエピソードを読む限り、その恐ろしさは、あの論理の飛躍した文体の持つカリスマ性だけでなく、もっと直接的な「暴力」によっても支えられていたの…

ソール・ベロー 『ラヴェルスタイン』

ソール・ベローの小説は大学時代に『その日をつかめ』を読んで感動し、以来翻訳されたものは全て読んだが、『その日をつかめ』以外はどれも面白いとは思えなかった。ベローの小説のおおまかな特徴として、衒学的な比喩を駆使した文体、形而上学的考察、知的…

ペアーズで最も女性人気のある作家は誰だ!

先日、あまりにもモテないのでとうとうペアーズに登録してみた。実際に使うのはもう少し先にしようと思っているが(プロフィール使える他撮りと金がない……)、無料会員でもコミュニティは覗けるので、偵察がてら色々見てみた。ちなみに、ペアーズをやってい…

Amazonに登録されていない角川文庫の海外文学

角川文庫のイメージと言えば、やはり「読んでから見るか 見てから読むか」というキャッチコピーに代表されるように、『人間の証明』、『戦国自衛隊』などの、映画と連動した作品が最初に思い浮かぶ。今でもこの路線は続いていて、東野圭吾とかが森村誠一的な…

高崎俊夫 『祝祭の日々』

インターネットで蓮實重彦とかやや古めの映画・小説について調べている時に、よく出てくるページがあって、それが高崎俊夫の「映画アットランダム」だった。多分、最初に目にしたのは、「スーザン・ソンタグと蓮實重彦の微妙な対話」で、恐らく「映画アット…

作家の写真を読む

俺はミーハーな文学好きなので、小説だけでなく、それを書いた作家の風貌にも興味がある。しかし、出回っている写真の多くは、晩年に撮られたものだったり、パブリック・イメージを意識したものだったりで、飽き足りないものがある。例えば、岩波書店から出…

『直木賞のすべて』と選ぶ「文学賞受賞作あれこれ」選手権

サイト「直木賞のすべて」や『直木賞物語』で知られるP.L.B.こと川口則弘さんが審査員を務めた、「文学賞の受賞作をレビューする」というテーマのエッセイコンテストで落選しましたが、「選外になったものの記憶に残ったもの」という欄で川口さんからコメン…

図書館通い

図書館をよく使う。金がないからだ。大学時代は中身を見ずに本を買うこともあったが、最近は図書館で一度借りて、内容を確認してから買うことにしている。それでも中々買えないから、多分本好きの大学生よりも、本を持っていない。余談だが、このブログは全…

スチュアート・ケリー 『ロストブックス』

1922年、ヘミングウェイの妻ハドリーは、スイスにいるヘミングウェイに会いに行く途中、スーツケースを盗まれた。このエピソードが有名なのは、その中に、大量の未発表原稿とそのコピーが入っていたからだ。ヘミングウェイの習作は永遠に失われることに…

独断と絶対的な自信を持って選ぶ珍伝記ベスト3

俺は伝記を読むのが好きだ。特に文学者の伝記をよく読む。 伝記というのは、そんなにはずれを引くことのないジャンルだと思う。十分な知識を持っていないと書けない分野だし、抽象的な事柄をほとんど取り扱わないから、スラスラと読んでいける。 逆に、つま…

文學界 1967年8月号 作家が選んだ戦後文芸評論ベスト20

『文學界』1967年8月号では、「作家が選んだ戦後文芸評論ベスト20」という特集を組んでいる。初めに、磯田光一司会で、野間宏、中村真一郎、小島信夫、大江健三郎らによる座談会(「作家にとって批評とは何か」)があり、その結びとして、読者に勧める文芸…

群像 1974年1月号 批評家33氏による戦後文学10選

『群像』1974年1月号では、「戦後文学」に関する特集が組まれており、「批評家33氏による戦後文学10選」というアンケートと、秋山駿・磯田光一・柄谷行人・川村二郎・上田三四二らによる座談会「戦後文学を再検討する」という企画が組まれている。ここに…

肉体的体力と精神的体力

一般的に「体力がある」といえば、肉体的な体力のことを指すだろう。しかし、僕は、「肉体的体力」の他に「精神的体力」というのもあると思う。 例えば、大勢の人の前で1時間発表しなければならないとする。たった1時間のことで、運動のように肉体を酷使し…

リバティーンズとキプリング

リバティーンズの「ガンガ・ディン」という曲は、キプリングの同名の戦争詩からとられている。ガンガ・ディンはインド人の水運びで、普段はイギリス人の兵隊からこき使われているが、戦場で彼らの一人を助けた後、流れ弾に当たって死ぬ。それを見た兵隊が、"…

群像 1996年10月号 私の選ぶ戦後文学ベスト3

『群像』1996年10月号は、「創刊五十周年記念号」ということで、大江健三郎×柄谷行人、江藤淳×秋山駿の対談や、木下順二、小田切秀雄のエッセイが載っているいる。 アンケートでは、「私の選ぶ戦後文学ベスト3」というのが企画されていて、選者は批評…

ジョン・ネイスン 『ニッポン放浪記』

ジョン・ネイスンは三島の『午後の曳航』や大江の『個人的な体験』の翻訳者であり、映画『サマー・ソルジャー』の脚本家であり、アーティスト小田まゆみの元夫でもある。 しかし、僕にとってはやはり『三島由紀夫─ある評伝─』の作者だ。ネイスンの三島伝は、…

映画『ジュリア』とリリアン・ヘルマンの嘘

ジェーン・フォンダが主演し、ヴァネッサ・レッドグレイヴがアカデミー助演女優賞を受賞した映画『ジュリア』は、原作がリリアン・ヘルマンの「自伝」であるため、「実話」ということになっているが、これは正しくない。正確に言うならば、他人の身に起こっ…

「舞姫」を批判する男はモテるのか?

森鴎外の短編「舞姫」は、教科書に掲載され、鴎外の作品の中で最も人口に膾炙したものだろうが、エリートの男が留学先で女を身勝手に捨てるという不道徳な内容から、発表当初より批判があり、また鴎外本人の身に起きたことを小説化していたため、小説・作家…

ノーベル文学賞はポルノがお嫌い

書店に行った際、小谷野敦の新刊『純文学とは何か』の冒頭だけを立ち読みしたのだが、そこに「村上春樹はなぜノーベル文学賞をとれないのか」とマスコミからよく聞かれると書いてあって、「通俗小説だから」というのが小谷野の答えで、モームやグレアム・グ…

本当は怖い文学史

文学史関係の本を読んでいると、気がつくことが一つある。それは、文学史というのが、作品の良し悪しというよりも、いわゆる「ゴシップ」の集積で出来ているということだ。文学史につきものの「論争」に関しても、そこに行きつくまでに、複雑な人間関係を経…

能年玲奈は何になりたいんだろう

たまに、能年玲奈のニュースを目に入れると、「この人は何になりたんだろう」と思うことがある。彼女が事務所と揉めて、干されたと話題になった時、ファンは女優業の継続を願っていた。その後、アニメ映画『この世界の片隅に』で声優を務め、口コミで映画が…

DVD化してほしい映画たち

少し前に、テレビで放映予定の未DVD化作品をツイートするツイッター・アカウントを作った。未DVD/廃盤/レア映画を観る方法 (@rare_movie) | Twitter 衛星放送に加入していれば、結構未DVD化作品を観ることができる。特に、東映チャンネルとかザ・シ…

クレイグ・ブロンバーグ 『セックス・ピストルズを操った男 マルコム・マクラーレンのねじけた人生』

マルコム・マクラーレンといえば、セックス・ピストルズを作った男であり、パンクを金になるメイン・カルチャーにまで押し上げた男だ。しかし、これほど毀誉褒貶が激しい人間もそういない。彼と仕事をした人間は、例外なく彼を嫌う(ジョン・ライドンとは裁…

批評と流行

マニア=オタク=批評家がにわかファンを駆逐し、流行していたものを衰退させる、という意見があるが実際は違うと思う。本当に人気のある物に対しては、批評家は完全に無力である。 例えば、ローリング・ストーンズやポール・マッカトニーには、ものすごい知…

ダメ人間が集まるサークルにも入れないダメ人間

ザ・ノンフィクション「会社と家族にサヨナラ・・・ニートの先の幸せ」を見た。 僕のツイッターのタイムラインでは、「あそこに出ている人たちは世間が想像するようなニートではなく、一般的な社会性はないが、何らかの異能を持った人たちの集まりだ」という…

ジャンキーの大部分は、隠れロマンティストだ、とアーヴィン・ウェルシュは書いた

アーヴィン・ウェルシュの小説『トレインスポッティング』には、マッティという名のエイズに感染したジャンキーが出てきて、彼は小説の終盤、トキソプラズマ症が原因の脳卒中で死ぬ。二十五歳という若さだ。マッティは下手なギタリストで、恋人のために恋の…