洋画

キネマ旬報特別編集 『オールタイム・ベスト 映画遺産200 外国映画篇』

本書は、『キネマ旬報』創刊90周年ということで企画され、2009年に刊行された。巻末にはキネマ旬報と関わりの深い会社の社長の名刺がずらずらと並べられている。 オールタイムベスト企画では、キネ旬以外だと映画秘宝のものが有名だが、人選はやはりキ…

ウディ・アレンの変身願望とマゾヒズム

1 序論──僕をメンバーにするようなクラブには入りたくない 一九七七年に公開された映画『アニー・ホール』の中で、ウディ・アレン演じるコメディアン、アルヴィ・シンガーが発した「僕をメンバーにするようなクラブには入りたくない」という自虐的ジョーク…

『アル・パチーノ』 アル・パチーノ ローレンス・グローベル

アル・パチーノは俳優として優れているというだけでなく、アメリカ文化においても重要な存在だ。『狼たちの午後』、『セルピコ』、『ゴッドファーザー』三部作、そして『スカーフェイス』といった作品を抜きにして、アメリカのポップ・カルチャーを語ること…

川本三郎 『スタンド・アローン』

たまたま昔の書籍に入っていた広告を見て気になり、読んでみたのだが、これが抜群に面白かった。「今世紀初頭(20世紀)から現在まで、映画、文学、スポーツ、音楽などの分野で独自の世界を築いた個性的な男たち23人のミニ・バイオグラフィー」というの…

遠山純生編 『映画監督のお気に入り&ベスト映画』

ツイッターでフォローしている人がこの本に言及していたので、図書館で借りてみた。 中身は、評論家がタランティーノやウォン・カーウァイの映画遍歴について書いたものや、エリック・ロメール、キアロスタミといった有名監督が映画について書いたエッセイの…

ポール・ニューマンとアカデミー賞

2016年に行われた第88回アカデミー賞受賞式では、これまで4度候補に挙がりながらオスカー像を逃し続けてきたレオナルド・ディカプリオが、5度目のノミネートで遂にアカデミー主演男優賞(『レヴェナント: 蘇えりし者』)を受賞したことが話題になっ…

パトリシア・ボズワース 『マーロン・ブランド』

マーロン・ブランドは1924年、ネブラスカ州オハマで生まれた。家族構成としては、両親の他に二人の姉がいる。母親のドディはブランドが小さい頃──時には家族そっちのけで──演劇に熱中していた。彼女は芸術家肌だったが、セールスマンの夫はそれに対し無…

ジャン=ジャック・ベネックス『オタク』の裏側

リリー・フランキーの『美女と野球』に入っているエッセイ「フランスのおっさん」(初出は「クロスビート」93年11月号)には、リリーがオタクのドキュメンタリーを撮りに日本へやってきたジャン=ジャック・ベネックスをアテンドした時のことが書かれて…

ポール・アレクサンダー 『ジェームズ・ディーン 破れた夢の道』

ジェームズ・ディーンの伝記を読んでみようと探していたら、翻訳されているものでは、ポール・アレクサンダーの物とドナルド・スポトーの物が見つかった。原著の発表は前者の方が早い。そして、アマゾンではアクレサンダーの物がかなり酷評されている。気に…

クレメンス・デビッド・ハイマン 『リズ』

女優の奥菜恵が3月13日に結婚を発表した。奥菜はこれで3度目の結婚になる。 結婚と離婚を繰り返した女優といえば、エリザベス・テイラーだ。彼女は7人の男性と8回結婚し、8回離婚した強者である。そんな彼女の人生を知るにはC・デビッド・ハイマンが…

映画の中の「文学」にまつわるミス

若松孝二の『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』を見ていたら、『英霊の聲』が河出書房から出版されて売れているという話が出た後に、ノーベル文学賞の話題に移るというシーンがあった。そこで三島役の井浦新が「なにしろ谷崎さんも候補になっていますか…

『サバービア─反逆のパンク・ロック』の思い出

今はもう閉館してしまったシアターN渋谷というミニシアターに、高校生の頃、音楽のドキュメンタリー映画をよく観に行っていた。当時は、パンク・ロックに強い関心を持っていて、80年代アメリカのパンク・シーンを描いた『アメリカン・ハードコア』を観に行…

テイラー・ハックフォード 『愛と青春の旅立ち』

top.tsite.jp T-siteの映画のコーナーに『愛と青春の旅立ち』のレヴューが掲載されました。 愛と青春の旅だち [DVD] 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン 発売日: 2014/09/10 メディア: DVD この商品を含むブログ (2件) を見る

R・W・ファスビンダー 『エフィー・ブリースト』

15日に、アテネフランセ文化センターで観たが、あまり関心しなかった。ファスビンダーの問題というよりかは、フォンターネの原作がどうしよもうなく古びているのだと思う(トーマス・マンは絶賛し、ベケットは『クラップの最後のテープ』で言及しているが…

『自由の代償』と『すべての男は消耗品である』

村上龍のエッセイ『すべての男は消耗品である』を読んでいたら、市原悦子主演の単発ドラマ『現代人妻戯画』を扱ったところがあって、そのドラマというのが、市原演じる主婦が金田賢一演じる売春夫を買うというもので、彼女は金田の関心を繋ぎとめ続けるため…

『青髭八人目の妻』と『じゃじゃ馬ならし』

エルンスト・ルビッチの『青髭八人目の妻』を観たら、『じゃじゃ馬ならし』に引っ掛けたギャグ(利かん気な妻であるクローベット・コルデールに悩まされていたゲイリー・クーパーが、『じゃじゃ馬ならし』を読み、そこからヒントを得て、彼女を手懐けるべく…

『カラビニエ』の元ネタ

ゴダールの『カラビニエ』の元ネタ。 www.youtube.com そして、これがそのネタを使ったシーン。(4分7秒あたり) www.youtube.com 興奮した観客がスクリーンを引きずり下ろすという些細なものだが。 カラビニエ [DVD] 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店 発売…

『プレイタイム』の見方

これまで観てきた映画の中でワースト1を選ぶとしたら、ジャック・タチの『プレイタイム』になる。「虚無」という言葉がこれほど相応しい映画も中々ない。「退屈」、その一言に限る。これを通しで全部見るなら、蟻の行列を眺めている方がはるかにましだ。 確…

デヴィッド・クローネンバーグ 『マップ・トゥ・ザ・スターズ』

さて、物語の中に、精神分析医や心理学者が出てきた場合、我々はそこに「始まり」を見出す。つまり、物語の根幹となる諸要素が、トラウマという形で、断片的/非論理的に彼の患者の口から洩れることを知っているからであり、以降、その物語が患者の語った言…

フォルカー・シュレンドルフ 『バール』

ブレヒトの同名戯曲を映画化した、シュレンドルフ監督の『バール』を見終えて、まず胸に浮かんだのは、「陰惨」という言葉だった。主演は、当時頭角を現しつつあった、R・W・ファスビンダー。彼は、バールという名の、新進気鋭の詩人を演じている。冒頭、…

シネマ・ハンドブック 2012

ツタヤの店舗などで売られている、映画のガイドブック。今はどうだか知らないけれど、昔はたしか200円分のTポイントと交換だったような気がする。 中身は、2011年の売れ筋を紹介した「洋画トップ50」、「邦画トップ20」や著名人が簡単な解説をつ…

シドニー・ルメット 『蛇皮の服を着た男』

南部、没落、抑圧、退廃、不能、暴力、アルコール…… これらは、テネシー・ウィリアムズの戯曲の特徴である。ウィリアムズは、そこに、詩情に満ちたセリフを被せ、象徴的な小道具を配置することで、彼独自の世界を構築する。だが、逆に言えば、ウィリアムズの…

R・W・ファスビンダー 『ホワイティ』

西部劇は、その社会から逸脱した人間、すなわちアウトサイダーの侵入によって、物語が始まる。そして厳重に秘匿されていた共同体の闇が、その口数少ない人物の「行動」によって徐々に暴かれる。だが、この基本条項を、冷たく裏切ることで生まれた、悪意に満…

安原顯編 『私の好きな映画 ベスト5』

本書は、『リテレール』の編集長、安原顯が企画・編集したもので、「リテレール・ブックス」シリーズの中の一つだ。出版されたのは1994年。様々な文化人が、自身の好きな映画を5本ほど挙げ、そこに簡単な解説を加えている。あとがきによれば、約300…

関景介編 『恋愛映画1000』

2000年にアスペクトから出版された、「恋愛映画」に的を絞ったガイド本。50人の「カルチャー系雑誌で活躍する50人の著名ライター」が、1人20本ずつ「恋愛映画」を紹介しているので、「1000」というタイトルになっている。日本美女選別家協会…

映画秘宝のオールタイムベスト特集号

映画秘宝はこれまでオールタイムベストの企画を二度ほど行っている。1998年と2008年だ。2008年版に収録されている町山・柳下対談の中で、町山は「(映画が:筆者注)その人にとってどれだけ影響したかが読むほうにとっては面白い」と言い、「人…

バーバラ・コップル 『ワイルド・マン・ブルース』

ウディ・アレンが率いるニューオーリンズ・ジャズ・バンドの、ヨーロッパ・ツアーを追った、1997年製作のドキュメンタリー。映画監督としてではなく、ジャズ・ミュージシャンとしてのアレンを追跡するというのが、いささか変則とした作りになっているが、な…

ウリ・エデル 『ブルックリン最終出口』

ドイツ人映画監督ウリ・エデルが、ヒューバート・セルビーJrの『ブルックリン最終出口』を原作に、1990年に発表。監督としては、『クリスチーネF』に続き2作目である。 舞台は1952年のニューヨーク、ブルックリン。冒頭から、チンピラたちが、酔…