海外文学

作家の性癖

人が自分の性癖を意識するのは何歳ぐらいからだろうか。個人的な経験から言わせてもらえば、小学校にあがる前、大体五歳ぐらいの時には、変態的な「エロ」を認識していた(詳しくは「童貞と男の娘」を読んで欲しい)。頭で自分の性癖を理解していたというよ…

ネルソン・オルグレンと寺山修司の出会い

ジル・クレメンツが作家たちを撮ってまとめた、『ライターズ・イメージ』という写真集を見ていたら(ちなみに、クレメンツの夫はカート・ヴォネガットで、この写真集の序文もヴォネガットが書いている)、ネルソン・オルグレンのところで、気になるものがあ…

ソール・ベロー 『ラヴェルスタイン』

ソール・ベローの小説は大学時代に『その日をつかめ』を読んで感動し、以来翻訳されたものは全て読んだが、『その日をつかめ』以外はどれも面白いとは思えなかった。ベローの小説のおおまかな特徴として、衒学的な比喩を駆使した文体、形而上学的考察、知的…

Amazonに登録されていない角川文庫の海外文学

角川文庫のイメージと言えば、やはり「読んでから見るか 見てから読むか」というキャッチコピーに代表されるように、『人間の証明』、『戦国自衛隊』などの、映画と連動した作品が最初に思い浮かぶ。今でもこの路線は続いていて、東野圭吾とかが森村誠一的な…

高崎俊夫 『祝祭の日々』

インターネットで蓮實重彦とかやや古めの映画・小説について調べている時に、よく出てくるページがあって、それが高崎俊夫の「映画アットランダム」だった。多分、最初に目にしたのは、「スーザン・ソンタグと蓮實重彦の微妙な対話」で、恐らく「映画アット…

作家の写真を読む

俺はミーハーな文学好きなので、小説だけでなく、それを書いた作家の風貌にも興味がある。しかし、出回っている写真の多くは、晩年に撮られたものだったり、パブリック・イメージを意識したものだったりで、飽き足りないものがある。例えば、岩波書店から出…

『直木賞のすべて』と選ぶ「文学賞受賞作あれこれ」選手権

サイト「直木賞のすべて」や『直木賞物語』で知られるP.L.B.こと川口則弘さんが審査員を務めた、「文学賞の受賞作をレビューする」というテーマのエッセイコンテストで落選しましたが、「選外になったものの記憶に残ったもの」という欄で川口さんからコメン…

スチュアート・ケリー 『ロストブックス』

1922年、ヘミングウェイの妻ハドリーは、スイスにいるヘミングウェイに会いに行く途中、スーツケースを盗まれた。このエピソードが有名なのは、その中に、大量の未発表原稿とそのコピーが入っていたからだ。ヘミングウェイの習作は永遠に失われることに…

独断と絶対的な自信を持って選ぶ珍伝記ベスト3

俺は伝記を読むのが好きだ。特に文学者の伝記をよく読む。 伝記というのは、そんなにはずれを引くことのないジャンルだと思う。十分な知識を持っていないと書けない分野だし、抽象的な事柄をほとんど取り扱わないから、スラスラと読んでいける。 逆に、つま…

ノーベル文学賞はポルノがお嫌い

書店に行った際、小谷野敦の新刊『純文学とは何か』の冒頭だけを立ち読みしたのだが、そこに「村上春樹はなぜノーベル文学賞をとれないのか」とマスコミからよく聞かれると書いてあって、「通俗小説だから」というのが小谷野の答えで、モームやグレアム・グ…

本当は怖い文学史

文学史関係の本を読んでいると、気がつくことが一つある。それは、文学史というのが、作品の良し悪しというよりも、いわゆる「ゴシップ」の集積で出来ているということだ。文学史につきものの「論争」に関しても、そこに行きつくまでに、複雑な人間関係を経…

ジャンキーの大部分は、隠れロマンティストだ、とアーヴィン・ウェルシュは書いた

アーヴィン・ウェルシュの小説『トレインスポッティング』には、マッティという名のエイズに感染したジャンキーが出てきて、彼は小説の終盤、トキソプラズマ症が原因の脳卒中で死ぬ。二十五歳という若さだ。マッティは下手なギタリストで、恋人のために恋の…

翻訳・新訳してほしい本

俺が読んでみたい本を選んだ。小説と作家の伝記が多い。 (間違えて、名前のあいうえお順にしてしまったが、気にしないで) フィクション・エッセイ・詩 アプトン・シンクレア The Moneychangers 作者: Upton Sinclair 出版社/メーカー: David De Angelis 発…

遠藤周作とグレアム・グリーンの「二重性」

グレアム・グリーンが遠藤周作の小説を称賛したことはよく知られている。二人にはカトリックという共通点があり、彼らの小説を語る際には、よくそのことが言及される。 カトリックであるということ以外に、二人を結び付けている共通点がもう一つある。それは…

川本三郎 『スタンド・アローン』

たまたま昔の書籍に入っていた広告を見て気になり、読んでみたのだが、これが抜群に面白かった。「今世紀初頭(20世紀)から現在まで、映画、文学、スポーツ、音楽などの分野で独自の世界を築いた個性的な男たち23人のミニ・バイオグラフィー」というの…

フィリップ・ロス原作映画ヒット祈願

今年はフィリップ・ロス原作の映画が二本も公開される。一本はIndignationで、監督は『ハルク』や『ブロークバック・マウンテン』のプロデューサーを務めたジェームズ・シェイマスだ。これが初監督作となる。シネマトゥデイによれば、内容は以下の通り。 195…

LES SPECS 1992年11月号 小沢健二×柴田元幸

小沢健二が東大時代、柴田元幸のゼミにいたことはよく知られている。小沢は1968年生まれだが、1浪しているので、大学入学は1988年。その後1留したから、卒業したのは1993年春ということになる。フリッパーズ・ギターが解散したのは大学在学中…

A・E・ホッチナー 『パパ・ヘミングウェイ』

本書は、作家のA・E・ホッチナーが、『コスモポリタン』の編集スタッフとしてヘミングウェイに会いに行った1948年から彼が自殺する1961年までの交流を描いたメモワールで、ヘミングウェイの晩年の生活を知るうえで大変貴重な資料だ。 1948年の…

ノーマン・メイラー 『黒ミサ』

ノーマン・メイラーの『黒ミサ』(原題:Trial of the Warlock)は、これまで日本語に翻訳されてきた彼の著作の中でも、最も知名度が低い作品だと思う。メイラーの翻訳は、だいたい新潮社か早川書房から出ているが、これは集英社から出版された。もともと『…

橋本福夫 『橋本福夫著作集Ⅰ』

橋本福夫(1906-1987)と言えば、ジェームズ・ボールドウィンやリチャード・ライトといったアメリカ黒人文学の翻訳者としてのイメージが強かったのだが、彼の死後編まれた著作集の第一巻が「創作・エッセイ・日記」をまとめた物であることを知り、…

西川正身 『アメリカ文学覚え書 増補版』

本書は、アメリカ文学者で翻訳も多く手掛けた西川正身がこれまで戦前から戦後にかけて雑誌などに書いてきた、アメリカ文学に関する批評文を集めたものだ。メルヴィルやフランクリン、マークトゥインといった正統派アメリカ文学を取り上げているが、実はそう…

青春について語ることは、恥ずかしさとサリンジャーについて語ることだ

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE 青春というのは気恥ずかしいものだ、という共通認識が世間にはある。若さゆえの過ち。だからこそ、若い時の恥ずかしい思い出は、大人になってからの恥ずかしい思い出よりも、堂々と発表できる。青春について語れと…

マドレーヌ・シャプサル 『作家の仕事場』

本書は作家としても知られるマドレーヌ・シャプサルが、自身もスタッフとして関わっている文芸誌「エクスプレス」で、1960年から1963年頃に行ったインタビューをまとめたものだ。インタビュイーは原著だと15人だが、邦訳を出すにあたって2人ほど…

宮本陽吉 『アメリカ最終出口』

アメリカ文学者で、ジョン・アップダイクやフィリップ・ロスの翻訳などをしている著者の批評的エッセイ集。タイトルは宮本自身が翻訳したヒューバート・セルビー・ジュニアの『ブルックリン最終出口』からとられているのだろう。宮本は、本書の3年前に『ア…

フィリップ・デイヴィス 『ある作家の生 バーナード・マラマッド伝』

20世紀アメリカを代表するユダヤ系作家として、よくセットで取り上げられるのがソール・ベロー(1915-2005)、バーナード・マラマッド(1914-1986)、フィリップ・ロス(1933-)だ。かつてベローはそういう状況に苛立ち、「文学版ハート・シェフナー・マーク…

止まれない男たち──「片思い」と「生きる意味」

往復書簡という形で作家のミシェル・ウエルベックとも共著を出したことがある哲学者ベルナール=アンリ・レヴィに『危険な純粋さ』(邦訳、紀伊國屋書店)という本がある。これ自体はユーゴスラビア紛争やイスラム過激派について扱った批評エッセイだが、タイ…

佐伯彰一 『批評家の自伝』

アメリカ文学者で批評家・翻訳家の佐伯彰一が死んだ。佐伯は1950年頃ウィスコンシン大学のフレデリック・J・ホフマンのもとでニュークリティシズムを学んだこともあったが、自伝・伝記を重視し、それらを紹介するようなエッセイを多数書いた。私もいく…

マドレーヌ・シャプサル編 『恋する手紙』

山本耕史が堀北真希に数十通の手紙を送ったというニュースを見て、文芸誌「エクスプレス」のスタッフとして数々の作家にインタビューを行い、後に自身も作家となったマドレーヌ・シャプサルが編集した『恋する手紙』という、前から気になっていた著作を読ん…

『五分後の世界』の元ネタと龍と蓮實の微妙な関係

「残酷な視線を獲得するために」と題された村上龍と蓮實重彦の対談(初出は「ユリイカ」臨時増刊「総特集 村上龍」青土社、1997年)で、村上は『五分後の世界』がメイラーの『裸者と死者』に影響を受けたことを明らかにしている。 僕は、ノーマン・メイラー…

ヒップかスクウェアか メイラーのリスト

このブログのアクセス解析を見たら、ノーマン・メイラー関連で訪問する人が多いので、参考までに『ぼく自身の広告』に所収されている「リスト」というのをここに引用してみたいと思う。これは何がHipで何がSquareかということを、メイラー自身が分類したもの…