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ロン・ローゼンバウム 「ドナルド・トランプって結構いい人だ」

かつて、東京書籍が「アメリカ・コラムニスト全集」というシリーズを企画していて、トム・ウルフやポーリン・ケイルの批評的エッセイ集等がその中に組み込まれていた。 この前、図書館でそのシリーズの中の一冊、ロン・ローゼンバウムの『ビジネス・ランチを…

中上健次の文芸時評

中上健次はマガジンハウスから出版されていた『ダカーポ』という雑誌で文芸時評を連載していたことがある。最初で最後の文芸時評だ。連載期間は1988年11月2日号から1989年11月1日号までの1年間で、連載回数は25回。 同時期には『朝日ジャー…

田村章 中森明夫 山崎浩一 『だからこそライターになって欲しい人のためのブックガイド』

ライター業に興味があったので読んでみた。何年か前に小谷野敦『評論家入門―清貧でもいいから物書きになりたい人に』(平凡社新書、2004)を読み、物書き稼業の過酷さについてはある程度知っていたが、1995年に出版された本書を読んで、その認識はま…

橋本福夫 『橋本福夫著作集Ⅰ』

橋本福夫(1906-1987)と言えば、ジェームズ・ボールドウィンやリチャード・ライトといったアメリカ黒人文学の翻訳者としてのイメージが強かったのだが、彼の死後編まれた著作集の第一巻が「創作・エッセイ・日記」をまとめた物であることを知り、…

西川正身 『アメリカ文学覚え書 増補版』

本書は、アメリカ文学者で翻訳も多く手掛けた西川正身がこれまで戦前から戦後にかけて雑誌などに書いてきた、アメリカ文学に関する批評文を集めたものだ。メルヴィルやフランクリン、マークトゥインといった正統派アメリカ文学を取り上げているが、実はそう…

宮本陽吉 『アメリカ最終出口』

アメリカ文学者で、ジョン・アップダイクやフィリップ・ロスの翻訳などをしている著者の批評的エッセイ集。タイトルは宮本自身が翻訳したヒューバート・セルビー・ジュニアの『ブルックリン最終出口』からとられているのだろう。宮本は、本書の3年前に『ア…

ストーカー──被害者と加害者の心理について

止まれない男たち──「片思い」と「生きる意味」で紹介した小説「悲望」(あらすじはそっちに書いた)だが、そこにこんな箇所がある。 私が篁さんに惹かれた原因の一つに、彼女の孤立があった。彼女と同学年の人たちは、研究室の「保守的」な気風に合っていな…

止まれない男たち──「片思い」と「生きる意味」

往復書簡という形で作家のミシェル・ウエルベックとも共著を出したことがある哲学者ベルナール=アンリ・レヴィに『危険な純粋さ』(邦訳、紀伊國屋書店)という本がある。これ自体はユーゴスラビア紛争やイスラム過激派について扱った批評エッセイだが、タイ…

『憂国』という戦略

1 三島由紀夫が監督を務めた映画『憂国』は、一九六六年に日本ではATG系列で公開された(ちなみにブニュエルの『小間使の日記』との併映だった)。映画は自身が書いた小説「憂国」を原作にしており、物語の背景には二・二六事件が使用されている。簡単に…

佐伯彰一 『批評家の自伝』

アメリカ文学者で批評家・翻訳家の佐伯彰一が死んだ。佐伯は1950年頃ウィスコンシン大学のフレデリック・J・ホフマンのもとでニュークリティシズムを学んだこともあったが、自伝・伝記を重視し、それらを紹介するようなエッセイを多数書いた。私もいく…

マドレーヌ・シャプサル編 『恋する手紙』

山本耕史が堀北真希に数十通の手紙を送ったというニュースを見て、文芸誌「エクスプレス」のスタッフとして数々の作家にインタビューを行い、後に自身も作家となったマドレーヌ・シャプサルが編集した『恋する手紙』という、前から気になっていた著作を読ん…

『自由の代償』と『すべての男は消耗品である』

村上龍のエッセイ『すべての男は消耗品である』を読んでいたら、市原悦子主演の単発ドラマ『現代人妻戯画』を扱ったところがあって、そのドラマというのが、市原演じる主婦が金田賢一演じる売春夫を買うというもので、彼女は金田の関心を繋ぎとめ続けるため…

『イアン・ブルマの日本探訪』と『病む女はなぜ村上春樹を読むか』

イアン・ブルマの『イアン・ブルマの日本探訪』には、「村上春樹 日本人になるということ」という、村上へのインタビューをもとにして構成した記事がある(初出は『ニューヨーカー』1996年12月23日号)。個人的なこと、特に家族について詳しく語りた…

『芥川賞について話をしよう 2010年下期~2013年下期』読者書評

週刊読書人 2014年9月5日号に掲載されました。 週刊読書人2014年9月5日号◇座談会=小谷野敦・栗原裕一郎対談 ―芥川賞について話をしよう第六弾<文学はこのまま壊びゆく運命にあるのか> 週刊読書人2014年9月5日号◇座談会=小谷野敦・栗原裕一郎対談 ―芥川賞…

今野裕一 『ペヨトル興亡史─ボクが出版をやめたわけ』

ペヨトル工房が2000年に解散した時、俺はまだ小学生だったから当然リアルタイムでは接していないのだが、ウィリアム・バロウズやJ・G・バラードの翻訳書を出していたという事で後にその名前を知った。『夜想』や『WAVE』が取り上げていたことと、…

ぼくらはカルチャー探偵団編 『読書の快楽』

安原顯が中心となって企画したブックガイド『読書の快楽』。1985年に角川文庫より出版され、その後も安原の手によって、様々なブックガイドが編まれた。 選者には、安原と付き合いのある人たちが起用されているのだが、いわゆるニューアカ関係者が多い(…

町山智浩 『トラウマ恋愛映画入門』

2013年に刊行された『トラウマ恋愛映画入門』(以下『トラウマ』)について、著者の町山智浩は、「恋愛映画について、いちから学ぶつもりで書いた」とインタビューで答えている(『 トラウマ恋愛映画入門』発売記念! 町山智浩インタビュー cakes …

マーティン・エイミス 『モロニック・インフェルノ』

本書はイギリス人作家マーティン・エイミスによる、「アメリカ」をテーマにした批評的エッセイ集で、原著は1986年に出版された。雑誌や新聞で発表した物を寄せ集めて作られているが、本にするにあたり、当時は制約があって書けなかったことを復元したと「前…

青山南 『小説はゴシップが楽しい』

だいたい80年代後半から90年代前半にかけてのアメリカ文壇について書かかれたエッセイ集で、いつもの青山の通り気取らない文体で綴られている。 俺が面白い思ったのは、「マクミラン・ショック」「グレートスノッブの心意気」「ヘルマン神話が解体される…

トム・ウルフ 『そしてみんな軽くなった』

『現代美術コテンパン』、『虚栄の篝火』などで知られるトム・ウルフが、1970年代という時代について独自の視点から抉ったエッセイ集。冒頭の「夜空のキンタマ」(原題は"Stiffened Giblets")と題されたエッセイ以外は、数ページ程度の短い文章で構成さ…

柳下毅一郎 『シー・ユー・ネクスト・サタデイ』

「映画館の暗闇は鬱屈を抱えてうずくまるものだった」と柳下毅一郎は言う。映画鑑賞とは、ひどく個人的な行為であり、決して明るいものではない。映画は誰かを救うことはできない。映画を見ることに根本的かつ前向きな意味を見いだせる者は、この世に存在し…

青山南 『ホテル・カリフォルニア以後』

「ホテル・カリフォルニア」という象徴的な言葉がタイトルがつけられた本書は、70年代アメリカ文学の解説書だ。一つのムーブメントを生み出したベトナム戦争が終わりを迎え、小説もまた新しい方向性を模索し始めた70年代。青山は、リアルタイムでアメリ…

マーティン・エイミス 『ナボコフ夫人を訪ねて』

イギリス人は、皮肉の達人と言われている。だけど、それはどこで確認できる? ビートルズを聞けばいいのか、それともモンティ・パイソンを見ればいいのか? いやいや、マーティン・エイミスを読めばいいのだ! 『ナボコフ夫人を訪ねて』は、雑誌に寄稿した文…

川本三郎 村上春樹 『映画をめぐる冒険』

村上春樹には、いくつか封印された文章があるが(有名どころでは、「街と、その不確かな壁」と「芥川賞について覚えているいくつかの事柄」)、恐らく本書もその部類に入るだろう。需要は間違いなくあるのに(古書店でプレミアがついている)、一体これが絶…

植草甚一 『アメリカ小説を読んでみよう』

雑学の大家植草甚一が、自分の好きなアメリカ小説(他の外国文学も少し出てくる)を語るエッセイ集。カバーの絵がノーマン・メイラーなのは、時代を象徴していて、ここに出てくる作家のほとんどが50年代から60年代の現代(当時)作家たちだ。テネシー・…

ミチコ・カクタニ 『仕事場の芸術家たち』

今ではアメリカ文学界を代表する評論家となったミチコ・カクタニの処女作。元々はジョン・アップダイクの章を除いて、ニューヨーク・タイムズ紙の記事である。ここで扱われているのは、作家、映画監督、劇作家、俳優といった職業の裏側だ。彼女は38人もの芸…