評論

今野裕一 『ペヨトル興亡史─ボクが出版をやめたわけ』

ペヨトル工房が2000年に解散した時、俺はまだ小学生だったから当然リアルタイムでは接していないのだが、ウィリアム・バロウズやJ・G・バラードの翻訳書を出していたという事で後にその名前を知った。『夜想』や『WAVE』が取り上げていたことと、…

ぼくらはカルチャー探偵団編 『読書の快楽』

安原顯が中心となって企画したブックガイド『読書の快楽』。1985年に角川文庫より出版され、その後も安原の手によって、様々なブックガイドが編まれた。 選者には、安原と付き合いのある人たちが起用されているのだが、いわゆるニューアカ関係者が多い(…

町山智浩 『トラウマ恋愛映画入門』

2013年に刊行された『トラウマ恋愛映画入門』(以下『トラウマ』)について、著者の町山智浩は、「恋愛映画について、いちから学ぶつもりで書いた」とインタビューで答えている(『 トラウマ恋愛映画入門』発売記念! 町山智浩インタビュー cakes …

マーティン・エイミス 『モロニック・インフェルノ』

本書はイギリス人作家マーティン・エイミスによる、「アメリカ」をテーマにした批評的エッセイ集で、原著は1986年に出版された。雑誌や新聞で発表した物を寄せ集めて作られているが、本にするにあたり、当時は制約があって書けなかったことを復元したと「前…

青山南 『小説はゴシップが楽しい』

だいたい80年代後半から90年代前半にかけてのアメリカ文壇について書かかれたエッセイ集で、いつもの青山の通り気取らない文体で綴られている。 俺が面白い思ったのは、「マクミラン・ショック」「グレートスノッブの心意気」「ヘルマン神話が解体される…

トム・ウルフ 『そしてみんな軽くなった』

『現代美術コテンパン』、『虚栄の篝火』などで知られるトム・ウルフが、1970年代という時代について独自の視点から抉ったエッセイ集。冒頭の「夜空のキンタマ」(原題は"Stiffened Giblets")と題されたエッセイ以外は、数ページ程度の短い文章で構成さ…

柳下毅一郎 『シー・ユー・ネクスト・サタデイ』

「映画館の暗闇は鬱屈を抱えてうずくまるものだった」と柳下毅一郎は言う。映画鑑賞とは、ひどく個人的な行為であり、決して明るいものではない。映画は誰かを救うことはできない。映画を見ることに根本的かつ前向きな意味を見いだせる者は、この世に存在し…

青山南 『ホテル・カリフォルニア以後』

「ホテル・カリフォルニア」という象徴的な言葉がタイトルがつけられた本書は、70年代アメリカ文学の解説書だ。一つのムーブメントを生み出したベトナム戦争が終わりを迎え、小説もまた新しい方向性を模索し始めた70年代。青山は、リアルタイムでアメリ…

マーティン・エイミス 『ナボコフ夫人を訪ねて』

イギリス人は、皮肉の達人と言われている。だけど、それはどこで確認できる? ビートルズを聞けばいいのか、それともモンティ・パイソンを見ればいいのか? いやいや、マーティン・エイミスを読めばいいのだ! 『ナボコフ夫人を訪ねて』は、雑誌に寄稿した文…

川本三郎 村上春樹 『映画をめぐる冒険』

村上春樹には、いくつか封印された文章があるが(有名どころでは、「街と、その不確かな壁」と「芥川賞について覚えているいくつかの事柄」)、恐らく本書もその部類に入るだろう。需要は間違いなくあるのに(古書店でプレミアがついている)、一体これが絶…

植草甚一 『アメリカ小説を読んでみよう』

雑学の大家植草甚一が、自分の好きなアメリカ小説(他の外国文学も少し出てくる)を語るエッセイ集。カバーの絵がノーマン・メイラーなのは、時代を象徴していて、ここに出てくる作家のほとんどが50年代から60年代の現代(当時)作家たちだ。テネシー・…

ミチコ・カクタニ 『仕事場の芸術家たち』

今ではアメリカ文学界を代表する評論家となったミチコ・カクタニの処女作。元々はジョン・アップダイクの章を除いて、ニューヨーク・タイムズ紙の記事である。ここで扱われているのは、作家、映画監督、劇作家、俳優といった職業の裏側だ。彼女は38人もの芸…