The Jesus and Mary Chain 『Psychocandy』

「無気力」。このアルバムを一言で評するなら、そういうことになる。

 ジーザス・アンド・メリー・チェインは、リード兄弟が中心となって結成され、二人の仲違いと共に崩壊した。兄弟バンドということでは、オアシスが有名だが、ジザメリにはノエルのようなやる気のある奴も、リアムのようなめちゃくちゃをやる奴もいない。5年間無職だったというエピソードに代表されるように、彼らはひたすら無気力だった。その無気力を完璧にパッケージングしたのが、このファーストアルバム『サイコキャンディ』だ。タイトル曲がなぜか収録されていないというのも、ふざけているし、ドラムが素人のボビー・ギレスピーというのもふざけている。真面目にやっている箇所はどこにもない。

 それでも不思議とこのアルバムは、独特な魅力を今でも放ち続けている。フィードバックノイズがそこかしこに流れ、ファズを聞かせたギターはまったく制御されていない。ヴォーカルは気だるげで、喉からしか声が出ていない。しかし、これがジザメリなのだ。彼らはやる気を見せないことにかけては一流の腕前を持っている。リード兄弟のテキトーさは天性のもので、誰にもまねできない。「好かれる気はないのか?」と問われたら、彼らはこう答えるだろう。「どうでもいい」

「何もやる気が起きない」という人々が社会に存在する限りこのアルバムは聞き続けられるはずだ。

 

太陽が昇り、また一日がはじまる

だけど自分の立場さえ気にしてないさ

頭が重くて、自分がみじめに見えてくる

でも太陽が沈んだら また出発しよう

 

「Never Understand」加納一美訳

  

サイコ・キャンディ

サイコ・キャンディ