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Babyshambles 『Down In Albion』

 高校時代のアイドルはピート・ドハーティだった。僕は文学にもかぶれていたので、歌詞の中で『宝島』に言及したり、ユイスマンスを愛読本に挙げたりしていた彼に、ミュージシャンとしてだけでなく、そのパーソナリティにも惚れこんでしまったのだ。

 僕がファンになった2006年頃、リバティーンズは既に解散していた。ドハーティはベイビー・シャンブルズを結成し、相方のカール・バラーは、ドラマーのゲイリー・パウエルと組んだバンド、ダーティ・プリティ・シングスで活動していた。僕は完全にシャンブルズ派だった。ドハーティのデカダンな魅力とスタイリッシュなファッションに取り憑かれていた。それは自分にはまったく存在しない要素だった。

 最近はあまり聞かなくなった気がするが、一時期、ドハーティ関連のニュースで流れてくるのは、全てドラッグにまつわることだった。ドラッグをやったとか、逮捕されたとか、リハビリ施設に入ったとか(これは今でも流れてくる)、そんなことばかりだった。彼のドラッグ癖は『Up the Bracket』をリリースした後から悪化の一途を辿り、バンドは彼抜きでツアーを行わなければいけないほどだった。解散したのも、彼のドラッグ中毒が大きな原因だった。話はそれるが、ドハーティが日本に来ないのは、逮捕歴のせいでビザがとれないから、という噂がある。

『Down In Albion』は、彼がそうしたドラッグの問題を抱えている時に作られた。プロデューサーはリバティーンズ時代からの付き合いである元クラッシュのミック・ジョーンズ。ジョーンズの主な仕事は、レコーディングのアイデアを出すとかそういう技術的なことではなく、リラックスできる環境を提供する、といったような精神的なものだったらしい。『Down In Albion』についてよく言われることの一つに、「デモっぽい」というのがあるが、ジョーンズのやり方は良くも悪くもそういうことなのだ。どういう風に録音するかということより、バンドが気持ちよく演奏できるかといったことの方に重点が置かれている。音質や演奏の雑さなど二の次だ! まあ、そのせいか、セカンド・アルバム『Shotter's Nation』では、プロデューサーがスティーブン・ストリートに変更されたが(笑)。

 音のラフさだけでなく、収録曲の多さというのも、『Down In Albion』の一つの特徴である。リバティーンズのファーストが36分だったのに対し、『Down In Albion』は63分。明らかに詰め込み過ぎだ。これに関しては、バンドというかドハーティが、どの曲を外せばよいか判断できなかった、というのが大方の見方である(普通はプロデューサーが介入したりするのだけれど)。悪評高いのは、当時の恋人ケイト・モスとフィーチャーした「La Belle et La Bête」とドハーティが刑務所で知り合った男に歌わせたレゲエ・ソング「Pentonville」だ。後者は特にひどい。

 勿論、「Fuck Forever」や「Albion」といった、ライブで歌われ続けることになる代表曲もある。それ以外だと、「Loyalty Song」、「The 32nd of December」も良い。ライブっぽさを残した、ぐしゃっとした音が、ドハーティという人間を表しているようでもあり、その生々しさに当時の僕はかなり感動した。だが、やはり通して聞くのは難しいな。 

Down in Albion

Down in Albion