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マーティン・エイミス 『モロニック・インフェルノ』

海外文学 評論

 本書はイギリス人作家マーティン・エイミスによる、「アメリカ」をテーマにした批評的エッセイ集で、原著は1986年に出版された。雑誌や新聞で発表した物を寄せ集めて作られているが、本にするにあたり、当時は制約があって書けなかったことを復元したと「前書き」で言っている。

 アトランタで起きた殺人事件やロナルド・レーガン、『プレイボーイ』について書いたエッセイもあるが、基本的にはアメリカ人作家についてのものが多い。取り上げられている作家は、ソール・ベロー、トルーマン・カポーティフィリップ・ロスノーマン・メイラーゴア・ヴィダル、ウィリアム・バロウズジョン・アップダイクなど。ブライアン・デ・パルマスティーブン・スピルバーグについて扱ったエッセイもある。

 本のタイトルにもなっている「モロニック・インフェルノ(愚者の地獄)」とは、ソール・ベローの言葉からとったとエイミスは言う(ベローはウィンダム・ルイスから取ったらしい)。巻頭におかれた同題のエッセイは、ソール・ベローの小説『学生部長の十二月』を批評したもので、エイミスはこれをかなり好意的に扱っている。そして、巻末にはエイミスがベローに会いにシカゴまで行った時のことを書いたエッセイが置かれていて、本書はベローで始まりベローで終わるようになっている。

 ノーマン・メイラーについて書いたエッセイでは、メイラーのこれまでの人生を皮肉っぽく振り返っているが、一方で、彼が今後傑作を生み出すのではないかとも期待している。当時メイラーが入れ込んでいた獄中作家ジャック・アボットの小説(?)については、「ある意味ではこの作品は、人が長い間孤独と恐怖にさらされるとどうなるかを示す、緻密で悲惨な証言と言えよう」と評し、「本当の謎は、どうして人々がこの作品を意義のあるものと錯覚したのかという点だ」とアボットを評価した連中(メイラーを含む)を批判している。メイラーについてのエッセイは、81年、82年、85年に書かれたものを組み合わせているのだが、ちょっとした伝記にもなっていて面白い。あと、メイラーの永遠のライバル、ゴア・ヴィダルについてのエッセイでも、メイラーが主要な登場人物として出てくるのには苦笑してしまった。

 

モロニック・インフェルノ

モロニック・インフェルノ