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苦労人ボブ・モウルド

 Youtubeでボブ・モウルドのライブ動画を検索すると、エレキギター一本、バックバンドなしで演奏しているモウルドの映像が結構出てくるのだが、まさに「ドサ回り」という感じだ。

www.youtube.com

 

 モウルドがギター一本で「ドサ回り」に明け暮れたのは、これが最初ではない。彼はハスカー・ドゥ解散後、ソロとして活動している時に、契約上のトラブルから借金を抱えることになり、それを返済するためギター一本でアメリカとヨーロッパを回ったのだった。「ロッキング・オン」1993年4月号には、シュガーとして来日した彼のインタビューが掲載されており、そのことにも触れられている(ちなみにこのページ、印刷所のミスで写真が抜けていて、巨大な空白が生まれている)。

 

・だけど、そこに至るまで(注:ハスカードゥがメジャーでむげに取り扱われた時代から、シュガーが売れるまで)はあなたは聞くところによるとすごい借金を抱えその返済のためにかなり追い詰められていたりもしたということですが。

モウルド いや、その状況に陥ったのはハスカードゥの解散後の話でね。ヴァージン・アメリカでソロを出した後色々と悪いことが起こっていたんだよ。当時ぼくの仕事関係のことはすべてマネージメント会社に任せていたんだけど、おかげでこの業界で大事な心得を随分と勉強させていただくハメになったよ(笑)。アメリカの大手マネージメント会社はコミッション制だから販売契約だろうが出版契約だろうがとにかく契約を数取りゃいいって考え方で動いてるんだよね。で、結局それで首が廻らなくなって全部アーティストにフォローさせるっていうね

・そのコミッションというのは要するにアーティストが事務所に払うマネージメント料ってことですよね。

モウルド そう。まず一旦会社に全額振り込まれて、そこからコミッションを取られるでしょ。で、残りは大体弁護士だのアゴアシ代だのと経費としてきえちゃうっていう……ハハッ

(中略)

・そこで借金が生じたわけですね。

モウルド そう。それがソロのセカンドを出した後、九十年の末の話

・それはすごい理不尽な話ですけど、実は多くのミュージシャンがそこで音を上げて消えてゆくという、ま、ありがちと言えば一番ありがちなフェイド・アウトのパターンなわけですよね。そこであなたが踏みとどまれたわけっていったいなんですか?

モウルド 確かにぼくが立たされていた苦境というのは今までに何人もの人間がアーティスト生命を絶たれて来た道筋をそっくり辿ってはいたよね。でもぼくは今三十二で声ももたなくなってきてはいるけどやっとスタート・ラインに着けたような気がするんだ。その前に諦めて去って行くなんてぼくは意地でもしたくなかったから、とりあえず会社のやつらすべてを自分の人生からつまみ出し処分するのが一番の得策だろうって色々考えた挙句、とにかく金を払おうって決断したんだ。それで九十一年、ぼくはギター一本にレンタカーでアメリカとヨーロッパを回りに回ってアコースティック・ライブをやったんだ。一晩二十ドルぐらいのモーテルを転々としながらツアー・クルーもなく、たったひとりで各地のクラブでギター一本で二時間ライブをやってた。そしてそれは単に借金を返すためって目的ばかりでなく次第に嫌な過去を全部洗い流す自浄作用を持ち始めたんだ。じつは『コッパー・ブルー』の構想もレンタカーで移動中に考えついたものなんだよ(p.105)

 

 最近のライブにはきちんとベースとドラムを入れているようだが、2000年代中盤から2010年代の初めにかけて、たった一人で演奏していたのは、やはり金欠だったのだろうか。 

  

Copper Blue

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