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タマ・ジャノウィッツ 『ニューヨークの奴隷たち』

 本作は、81年に長編小説『アメリカン・ダッド』でデビューした、タマ・ジャノウィッツが86年に発表した短編小説集で、彼女の出世作でもある。デビュー以降、鳴かず飛ばずの時期を送っていた彼女だったが、『ニューヨーカー』に短編「ニューヨークの奴隷たち」が取り上げられたことで注目され、89年にはジェイムズ・アイヴォリーが『ニューヨークの奴隷たち』を映画化した。

 本作が出版された当時は「女性版ジェイ・マキナニー」という紹介をされていたので、さほど期待せずにこの本を読んだのだが、意外と面白かった。

 ざっくり中身を紹介すると、ニューヨークのアート業界を舞台にした連作短編集ということになる。ジャノウィッツ自身、ロニー・クロートンというアンディ・ウォーホルのアシスタントをしていた画家と交際していた経験があり、その時のことがわりと活かされているようだ。

 物語の中心となるのは、野心を抱えた売れない画家やデザイナー、そして画廊のオーナー等。彼らの織り成す人間関係が小説のテーマとなっている。アート業界だけあって、出てくる人間は悪い意味で一癖も二癖もある人物ばかり。ジャノウィッツは彼らの日常生活を丁寧に時にユーモアを交えて描いている。僕が特に好きなのは、画廊の経営に悪戦苦闘する男を描いた「スノーボール」という話だ。若い頃は過激な美術運動に関わっていたのに、中年になった今では雑事に追いまくられ、恋愛も仕事もつらいものでしかなくなっている、というのがリアルで良いと思った。

 ジャノウィッツはウォーホルと交流があり、この小説も元々はウォーホルの手によって映画化される予定だったらしいが、彼が病死したことで企画は頓挫し、その後ジェイムズ・アイヴォリーとプロデューサーのI・マーチャントが映画化に携わった。日本ではビデオのみの販売で、DVDには未だなっていない(と思っていたら2013年に復刻シネマライブラリーからDVDが発売された)。

 ちなみに、ジャノウィッツの父親精神科医で、母親はコーネル大学で教える詩人である。

 

ニューヨークの奴隷たち

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