「村上春樹」というイメージ

 村上春樹は『羊をめぐる冒険』で、「右翼の大物」なる人物を登場させていたけれど、今、自分が社会的に大きな影響力を持っていることについてはどう思っているのだろうか。何せ、小説内で用いたクラシック音楽を、ベストセラーにすることができるぐらいだ。昔、ケネディが褒めたおかげで、イアン・フレミングの小説がアメリカでベストセラーになったことがあったが、正にそれと同じ現象が起こっている。クラシック・ジャーナルの編集長中川右介ツイッターで「「1Q84」の3に、どの曲のどの演奏が出てくるかによって、明日のレコード会社の株価が変わる」とツイートしていた*1

 村上春樹が描けるのは80年代の世界までだという議論があるが、それは、それ以降の事となると作品内で「村上春樹」という存在を無理矢理無視しなければならないからだと思う。つまり「村上春樹的価値観」は作品内で提示されているのに、本人に相当する人物が存在しないからおかしなことになってしまうのだ。大江健三郎は「長江古義人」という登場人物を作ることでその問題を回避した。今後、村上春樹が小説内で「村上春樹」を消し続ける限り、そうした違和感も残り続けることだろう。

 

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