映画の中の「文学」にまつわるミス

 若松孝二の『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』を見ていたら、『英霊の聲』が河出書房から出版されて売れているという話が出た後に、ノーベル文学賞の話題に移るというシーンがあった。そこで三島役の井浦新が「なにしろ谷崎さんも候補になっていますからね」と言うんだが、『英霊の聲』出版時(1966年)には谷崎は死んでいる(1965年)。

 

 1925年に公開されたキング・ヴィダー監督の『ビッグ・パレード』は、第一次世界大戦を扱った映画なのだが、そこで兵士らがヘミングウェイを使った軽い冗談を言うシーンがある。映画は1917年という時代を扱っているのに、当時まだ無名の存在だったヘミングウェイがそういう使われかたをするのはおかしい。ヘミングウェイが有名になったのは、ちょうどこの映画を製作している時期と重なるなので、刷り込みのような形で勘違いしたのか。

 

 

 

 

ビッグ・パレード【淀川長治解説映像付き】 [DVD]

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