アル・パチーノ ローレンス・グローベル 『アル・パチーノ』

 アル・パチーノは俳優として優れているというだけでなく、アメリカ文化においても重要な存在だ。『狼たちの午後』、『セルピコ』、『ゴッドファーザー』三部作、そして『スカーフェイス』といった作品を抜きにして、アメリカのポップ・カルチャーを語ることはできないだろう。

 そういうわけで、以前から彼の伝記を読んでみたいと思っていて、ネットで調べるとキネマ旬報社から『アル・パチーノ』というタイトルの本が出ていることがわかった。早速、図書館で借りてみると、伝記ではなく、インタビュー集だった。インタビュアーのローレンス・グローベルはマーロン・ブランドのインタビューも担当していて、それを読んだパチーノが、彼を指名したらしい。グローベルは『カポーティとの対話』というインタビュー本も出していて、これはわりと面白かった(酒が入っていたせいか、大悪口大会という有様で、カポーティ女性嫌悪が露骨に表れている)。

 しかし、この本に関しては、僕の期待していたようなものではなかった。話の多くが、抽象的な演技論や作品論に集中していて、ハリウッドにおけるパチーノの立ち位置や、彼の生い立ち、それから交友関係にまつわるゴシップにもほとんど触れられていないため、パチーノがどういう人間なのかいまいち掴めない。また、同じ話題を繰り返しているところも多い。アル・パチーノ。クローベルとカポーティの本が面白かったのは、カポーティの話術によるところが大きかったのだと、当たり前のように再認識させられた。

 パチーノのキャリアを時系列順に描いた伝記の登場が待ち望まれる。

 

アル・パチーノ

アル・パチーノ

 

  

カポーティとの対話

カポーティとの対話

 

  

 インタビューの後半では、演劇をテーマにしたこれらの作品に、焦点が当たっている。『リチャードを探して』は、シェイクスピアの『リチャード三世』をめぐるドキュメンタリー。『チャイニーズ・コーヒー』は俳優アイラ・ルイスが書いた戯曲の映画化でパチーノ自身が監督を務めている。『不名誉のローカル』はヒースコート・ウィリアムズの戯曲の映画化。『リチャードを探して』以外は、日本ではソフト化されていない。