群像 1974年1月号 批評家33氏による戦後文学10選
『群像』1974年1月号では、「戦後文学」に関する特集が組まれており、「批評家33氏による戦後文学10選」というアンケートと、秋山駿・磯田光一・柄谷行人・川村二郎・上田三四二らによる座談会「戦後文学を再検討する」という企画が組まれている。ここにはアンケートの結果の一部を掲載しよう。ちなみに、「対象範囲は戦後登場した作家と作品に限りました」という断り書きがついているので、谷崎や川端は対象外になっている。
椎名鱗三『深夜の酒宴』
大岡昇平『野火』
大江健三郎『飼育』
島尾敏雄『死の棘』
野間宏『青年の環』
辻邦生『背教者ユリアヌス』
小川国夫『或る聖書』
足立康
大岡昇平『武蔵野夫人』
安岡章太郎『ガラスの靴』
曾野綾子『海の御墓』
遠藤周作『海と毒薬』
安部公房『第四氷河期』
石原慎太郎『ファンキー・ジャンプ』
福永武彦『飛ぶ男』
大岡昇平『野火』
阿川弘之『雲の墓標』
石原慎太郎『完全な遊戯』
大江健三郎『個人的な体験』
遠藤周作『沈黙』
古山高麗雄『プレオー8の夜明け』
阿部昭『司令の休暇』
大橋健三郎
大岡昇平『野火』
安岡章太郎『海辺の光景』
藤枝静男『空気頭』
大庭みな子『三匹の蟹』
椎名麟三『懲役人の告発』
岡庭昇
椎名麟三『深尾正治の手記』
小林勝『目なし頭』
金石範『鴉の死』
福田善之『袴垂れはどこだ』
野間宏『青年の環』
島尾敏雄『夢の中での日常』
埴谷雄高『死霊』
北杜夫『幽霊』
倉橋由美子『反悲劇』
大岡昇平『レイテ戦記』
吉行淳之介『暗室』
野間宏『暗い絵』
椎名麟三『重き流れのなかに』
田宮虎彦『霧の中』
埴谷雄高『死霊』
吉本隆明『転位のための十篇』
藤枝静男『空気頭』
三島由紀夫『春の雪』
吉行淳之介『暗室』
小田切進
埴谷雄高『死霊』
野間宏『真空地帯』
武田泰淳『風媒花』
大岡昇平『俘虜記』
遠藤周作『海と毒薬』
大江健三郎『芽むしり仔撃ち』
高橋和巳『悲の器』
堀田善衛『海鳴りの底から』
北杜夫『楡家の人びと』
木下順二『神と人の間』
大岡昇平『レイテ戦記』
野間宏『青年の環』
武田泰淳『富士』
大岡昇平『野火』
田宮虎彦『絵本』
結城信一『鶴の書』
吉行淳之介『娼婦の部屋』
安岡章太郎『海辺の光景』
井上光晴『地の群れ』
古山高麗雄『プレオー8の夜明け』
阿部昭『司令の休暇』
梅崎春生『幻化』
丸谷才一『笹まくら』
福永武彦『幼年』
辻邦生『夏の砦』
大岡昇平『レイテ戦記』
野間宏『青年の環』
入沢康夫『わが出雲・わが鎮魂』
野間宏『暗い絵』
中村真一郎『死の影の下で』
埴谷雄高『死霊』
大岡昇平『野火』
椎名麟三『自由の彼方で』
花田清輝『鳥獣戯話』
梅崎春生『幻化』
大岡昇平『野火』
花田清輝『小説平家』
福永武彦『死の島』
武田友寿
埴谷雄高『死霊』
大岡昇平『野火』
椎名麟三『自由の彼方で』
島尾敏雄『死の棘』
堀田善衛『海鳴りの底から』
野間宏『わが塔はそこに立つ』
遠藤周作『沈黙』
田中美代子
三島由紀夫『愛の渇き』
三島由紀夫『禁色』
安部公房『第四氷河期』
三島由紀夫『美しい星』
島尾敏雄『日を繋けて』
吉行淳之介『暗室』
中野考次
大岡昇平『俘虜記』
安東次男『CALENDRIER』
野間宏『真空地帯』
大江健三郎『芽むしり仔撃ち』
島尾敏雄『出発は遂に訪れず』
大岡昇平『レイテ戦記』
埴谷雄高『死霊』
島尾敏雄『死の棘』
福永武彦『忘却の河』
梅崎春生『幻化』
椎名麟三『懲役人の告発』
野間宏『青年の環』
武田泰淳『富士』
大江健三郎『個人的な体験』
遠藤周作『沈黙』
福永武彦『死の島』
大岡昇平『レイテ戦記』
埴谷雄高『闇の中の黒い馬』
古屋健三
大岡昇平『花影』
安岡章太郎『海辺の光景』
吉行淳之介『闇のなかの祝祭』
島尾敏雄『出発は遂に訪れず』
大江健三郎『個人的な体験』
遠藤周作『留学』
古井由吉『杳子』
阿部昭『父と子の夜』
松原新一
椎名麟三『深夜の酒宴』
野間宏『崩壊感覚』
大岡昇平『野火』
大江健三郎『芽むしり仔撃ち』
島尾敏雄『死の棘』
堀田善衛『海鳴りの底から』
井上光晴『地の群れ』
小田実『ガ島』
利沢行夫
埴谷雄高『死霊』
大岡昇平『俘虜記』
島尾敏雄『死の棘』
大江健三郎『個人的な体験』
武田泰淳『富士』
辻邦生『背教者ユリアヌス』
小川国夫『試みの岸』
渡辺広士
埴谷雄高『死霊』
大岡昇平『野火』
野間宏『青年の環』
三島由紀夫『豊穣の海』
武田泰淳『快楽』
大江健三郎『洪水はわが魂に及び』
どの批評家も基本的には、大江健三郎、安部公房、三島由紀夫、埴谷雄高、大岡昇平、小島信夫、武田泰淳、野間宏などの、手堅いところを選んでいるという印象。田中美代子だけが、趣味に忠実だ。
野間宏の『青年の環』を選んでいるのが結構いるが、よくあれを読み通したなという感じ。それとも、読み通したからには選ばないともったいない、と思っていたりして。
意外なところでは、武田泰淳の『森と湖のまつり』を選んでいる人が多い。この頃は、武田の代表作で、映画化までされたようだが、今ではあまり読まれていない。