SST Records マイナー作品紹介②

V.A. 『The Melting Pot』1988年

 これは、Dave Markeyというインディーズで活躍している映画監督が企画したアルバムで(彼は後に『1991: The Year Punk Broke』を撮った)、収録されている曲は全てカバー。一部はMarkeyの映画に使われているようだ。

 全体的には、SSTになじみ深いバンドが、ロックンロールの有名曲をおふざけで演奏しているという感じ。まともに演奏しているほうが少なく、だいたいは曲を途中でぶった切っている。

 この企画のためだけに作られたバンドもある。一曲目でThe Osmonds の「Crazy Horses」をカバーしているRevolution 409は、レッド・クロスのメンバーがスタジオ・ミュージシャンと変名で結成したものだ。Brews Springstienというふざけたバンドもある。一応、まともなバンドではSonic YouthやL7、Dc3等が参加してます。

Melting Pot

Melting Pot

 

 

Tar Babies 『Honey Bubble』1989年

 1980年代初期にウィスコンシン州マディソンで結成されたのロック・バンドTar Babies。パンクやファンクに影響を受け、89年に通算3枚目のアルバムとなる本作『Honey Bubble』をリリースした。10年程度という短い活動期間のわりに、そこそこメンバーが入れかわっているが、このアルバムではBucky Pope、Steve Lewis、Dan Bitneyが正式にクレジットされている。ドラマーのDan Bitneyは後にTortoiseに参加した。

 スラップベースの多用、早口のヴォーカル、歪んだギターの組み合わせが、耳に心地よい。初期のレッチリをパンク風にしたような雰囲気がある(つまり、ミクスチャー・ロックということか)。一曲目の「Rockhead」はスケーターにも人気があるようだ。時折挿入されるホーンも、サウンドを豊かなものにしている。

 ちなみに83年にリリースされた『Face the Music』というEPではボブ・モウルドやブッチ・ヴィグが録音に携わっている。 

Honey Bubble

Honey Bubble

 

  

Sister Double Happiness 『Sister Double Happiness』1988年

 ヴォーカルのGary FloydとドラムのLynn Perkoを中心にサンフランシスコで結成されたバンド。Lynn PerkoはThe Dicksに所属していたこともあり、Sister Double Happiness解散後は、Imperial Teenのメンバーとなった。

『Sister Double Happiness』はSSTからリリースされた彼らのファースト・アルバム。音楽性はブルースを基調にしたロックで、派手さはないが、堅実な演奏と低く太いヴォーカルが雰囲気よく調和している。気を衒ったようなところはなく、インディーズには珍しい王道志向で、今でもそこそこ聴かれているのも納得だ。まあ、悪く言えば、「古臭い」ということになるのだろうが。ブルースの古典「Let Me Play With Your Poodle」のカバーを収録。   

Sister Double Happiness

Sister Double Happiness

 

 

 Alter-Natives 『Group Therapy』1988年

 ヴァージニア州リッチモンドで結成され、主に80年代中盤から後半にかけて活動した4ピース・インストゥメンタル・バンド。ドラマーのJim Thomsonは一時期GWARでも活動していたらしい。SSTからアルバム3枚出した後、解散した。

 ベース、ギター、ドラムといった基本的な楽器の他に、カズー、タブラ、フルート、サックスといった普通のロック・バンドでは中々お目にかかれないような楽器が加わっているのが特徴。サイケデリックかつフリージャズ的要素が随所に漂い、歪ませたギターが混沌を加速させている。テンポの速い長尺の曲もあれば、実験的な短い曲もある。オーネット・コールマンジョン・ゾーンという風に、僕は感じた。 

Group Therapy

Group Therapy

 

 

October Faction 『October Faction』1985年

 まあ、これはお遊びみたいなものですね。October FactionはBlack Flagの前座として活動していたジャムバンド。メンバーは Greg Ginn、Joe Baiza、Tom Troccoli、 Chuck Dukowskiなど。

 このアルバムはライブ盤で、全7曲が収録ということになっているが、iTunesで読み込むと30分全1曲にまとめられてしまう。まあ、元々切れ目なんてあってないようなもので、30分間延々とギンのギターが炸裂し続けている。シラフで聞き通すのはかなり難しいだろう。マイク・ワットはOctober Factionについて「何のリスペクトもしていない」と語り、Black Flagのファンからももかなりの顰蹙を買っていた。ジャケットにはGreg Cameron(SWAのドラマー)のイラストが描かれているが、このアルバムで実際にドラムを叩いているのはBill Stevenson。ちなみに、Tom Troccoliというのは、Black Flagのツアーで物販を担当していた男。ギンに取り入って、SSTから糞みたいなCDを出したが、勿論今では誰も聞いていない。 

Octoberfaction

Octoberfaction