ウンコをもらしかけた

 先週の金曜日、ウンコをもらしかけた。

 家を出る直前、腹に少し違和感があって、「あ、トイレ行っとけばよかったかな」と思ったのだが、まあ大丈夫だろうと家を出、電車に乗った。最寄りが始発駅だから、乗換駅に着くまでいつも寝ているのだが、腹の中で渦潮が巻き起こっているような強烈な感覚に襲われ、3駅ぐらい手前で目が覚めた。この時点ではまだ我慢しようと思えばできるぐらいのレベルだったのだが、乗換駅に到着した頃には、頭の中で警報がガンガン鳴り響いていた。

 数秒単位で、便意が上昇していく。少しでも刺激が加わると大事故に繋がる。まるでニトログリセリンを運搬しているかのようだ。

 7月入社で、水曜から新しい会社に出社していた俺は、この日が三回目の出勤だった。だから、乗換駅の構造にまだ慣れておらず、おまけに脳がウンコのことしか考えられなくなっていたから、間違えて反対の電車に乗ってしまった。すぐに間違えに気付き、次の駅で降りたが、この頃には便意が完全に危険水域に達し、常に全力で肛門の筋肉を締めていないと即決壊するという状況だった。あまりにも内側に向かって力をこめているものだから、肉体が反転しそうだった。

 会社の最寄り駅に到着するまでの10分間、俺は車内で選択を迫られていた。一つは、会社まで我慢して、会社のトイレでウンコをするか、もう一つは、最寄り駅のトイレに行くか、という選択。会社のトイレに行く場合、駅の中を10分近く歩いてほぼ直結しているオフィスビルに入り、さらに自分の部署の入っている30階まで我慢しなければならない(セキュリティ上、自分の会社の入っている階にしか入れないのだ)。もう一つの選択肢である駅のトイレは、朝の通勤時間帯だと、満員長蛇の列という可能性がある。会社のトイレなら待つ必要はないが、そこに行きつくまでに力尽きるかもしれない。会社か駅か、それが問題だ。

 円谷幸吉の遺書が脳内をよぎった頃、電車が最寄り駅に着いた。エスカレーターに乗っている間、「これはもう無理だ」と直感した。これ以上歩いたら、尻から茶色いジェットを噴射するだろう。それで、一か八か、俺は駅のトイレを選択した。そうしたら、奇跡的に個室が空いていたのだ。俺は慎重にズボンを下ろし、着席するまで、肛門を締め続けた。ここでミスったら、最悪である。しかし、無事、便を排出することに成功。漏らさずに済んだのである。

 もし、会社まで我慢していたら、ダムが崩壊していた蓋然性は高い。しかも、漏らした場所が社内だったら、俺は入社一週目で、退職しなければならなかった。この日は、研修だったのだが、ウンコを漏らした際の対処方法も研修で教えてほしいと思った。

 あと、これは特に秘すべきことなのだが、会社で二回目のウンコをしたら、あまりに水っぽすぎて、ケツを上げた瞬間、汚水が床にこぼれた。勿論、ふき取ったが、暫くあのトイレは使わないことにする。

 

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