諸君! 2007年10月号 私の血となり、肉となったこの三冊

『諸君!』2007年10月号では、「読書の季節の到来にちなみ」、「人格・精神形成に大きな影響を与えた本」、「人生の見方、考え方に影響を与えた本」をテーマにし、著名人108名にアンケートを行っている。以下、気になったものを挙げてみる(出版社・訳者などは省略)。

 

青木保

トーマス・マン『トニオ・クレーゲル』

大仏次郎鞍馬天狗(夕立の武士ほか)』

吉田健一『ヨオロッパの世紀末』 

 

青柳正規

小川未明童話集』

五味川純平『人間の条件』

ラヌッチョ・ビアンキ・バンディネッリ『古典美術の歴史性』

 

池部良

夏目漱石坊っちゃん

 

井上章一

つかこうへい『小説熱海殺人事件

谷沢永一『紙つぶて(全)』

ミスター高橋『流血の魔術 最強の演技』 

 

猪木武徳

(1)ヴィンセント・ヴァン・ゴッホゴッホの手紙』

(2)アダム・スミス道徳感情論』

(3)オルテガ『大衆の反逆』 

 

入江隆則

小林秀雄『近代絵画』

サルトル『殉教と反抗』

グリエルモ・フェレーロ『権力論』

 

梯久美子

・『聖書物語』『ギリシア神話物語』

・『石川啄木詩集』

森崎和江『まっくら』

 

亀井俊介

D・H・ロレンスチャタレイ夫人の恋人

ホイットマン『草の葉』

ヘンリー・ミラー『北回帰線』

 

切通理作

岸田秀『ものぐさ精神分析

竹田青嗣『近代哲学再考』

ジル&ファニー・ドゥルーズ『情動の思考──ロレンス『アポカリプス』を読む』

 

呉智英

足立巻一『やちまた』

白川静孔子伝』

J・L・タルモン『フランス革命と左翼全体主義の源流』

 

小堀桂一郎

(一)慈圓大僧正『愚管抄

(二)新井白石『西洋紀聞』

(三)竹山道雄『昭和の精神史』

 

佐野眞一

石川淳『至福千年』

開高健『夏の闇』

藤枝静男『空気頭』

 

佐々淳行

『プルーターク英雄伝』

ウィリアム・ジェームズ『宗教経験の諸相』

セシル・スコット・フォレスターホーンブロワーシリーズ」

 

篠沢秀夫

中島文雄『英語の常識』

スタンダール赤と黒

デュマ『三銃士』

 

谷沢永一

一、澤田謙『プルーターク英雄伝』

二、ヴァレリー詩学叙説』

三、平野謙島崎藤村

 

田原総一朗

ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟

サルトル存在と無

森鷗外渋江抽斎

 

筒井清忠

長谷川伸『夜もすがら検校』

橋川文三「昭和超国家主義の諸相」(『昭和ナショナリズムの諸相』所収)

西條八十歌集』

 

土居健郎

1、吉田松陰『講孟余話』

2、キュルーゲン『一老人の幼時の追憶』

3、ブチャー『ギリシア精神の様相』

 

中島義道

サルトル『分別ざかり』

カミュ『太陽の賛歌 カミュの手帖──1』

クレジオ『愛する大地』

 

中曾根康弘

西田幾多郎善の研究

『聖書』

松井孝典『地球・宇宙・そして人間』

 

仲正昌樹

ルソー『人間不平等起源論』

ホルクハイマー/アドルノ啓蒙の弁証法

アレント『革命について』

 

中西輝政

『ヴェノナ──アメリカにおけるソ連諜報活動の解読』

エスト『マスク作戦』

コッチ『ダブル・ライヴズ』 

  

西木正明

西岡一雄・海野治良・諏訪多栄蔵『登山技術と用具』

トール・ヘイエルダール『コン・ティキ号探検記』

トルーマン・カポーティ『遠い声 遠い部屋』 

 

橋爪大三郎

クロード・レヴィ=ストロース構造人類学

ヴィトゲンシュタイン論理哲学論考

森嶋通夫マルクスの経済学』

 

秦郁彦

ヴィクトル・ユーゴーレ・ミゼラブル

夏目漱石三四郎

大佛次郎義経の周囲』

 

林望

1、森鷗外渋江抽斎

2、伊丹十三『女たちよ!』

3、萩原朔太郎『青猫』

 

平川祐弘

楠山正雄訳『少年ルミと母親』

島田謹二『ロシヤにおける広瀬武夫

鈴木貫太郎自伝』

 

福岡伸一

エルヴィン・シュレーディンガー『生命とは何か』

清水博『生命を捉えなおす』

橋元淳一郎『時間はどこで生まれるのか』

 

福田和也

獅子文六『大番』

小林信彦『東京のロビンソン・クルーソー

金子光晴『ねむれ巴里』 

 

舛添要一

(1)トルストイ戦争と平和

(2)夏目漱石草枕

(3)ロバート・ボルト『すべての季節の男──わが命つきるとも』(『世界文学全集』別巻2所収) 

 

御厨貴

三木清『人生論ノート』

三島由紀夫天人五衰

林達夫共産主義的人間』

 

水谷尚子

①西里龍夫『革命の上海で──ある日本人中国共産党員の記録』

上野英信天皇陛下萬歳──爆弾三勇士序説』

③新免康『ウイグル人民族主義者 エイサ・ユスプ・アルプテキンの軌跡』 

 

宮崎哲弥

(1)星新一『ようこそ地球さん』

(2)永井均『〈子ども〉のための哲学』

(3)アラン・ボブソン『夢の科学』

 

森永卓郎

斎藤貴男『機会不平等』

ポリー・トインビー『ハードワーク』

菊池英博『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠』 

 

渡部昇一

佐々木邦『凡人伝』

パスカル『パンセ』

③アレキシス・カレル『人間──この未知なるもの』

 

渡辺保

一、三宅周太郎『演劇巡礼』

一、加藤周一『政治と文学』

一、レコード常磐津『角兵衛』

 

渡邊恒雄

出隆『哲学以前』

カント『実践理性批判

ニーチェツァラトゥストラかく語りき』 

 

 保守系の雑誌なので当然人選もそちらに偏っている。学者は外交関係が多いか。また、普段読書系のアンケートには無縁な、実業家や政治家がいるのも特徴。

 三冊しか選べないわりには結構被っている本もあって、『聖書』などの古典は特に不思議ではないが、島崎藤村『夜明け前』(加地伸之、佐瀬昌盛)、森鷗外渋江抽斎』(田原総一朗、徳岡考夫、林望)は意外だった。

 また、三木清林達夫などは時代的なものを感じさせる。竹山道雄の『昭和の精神史』という本を俺は知らなかったが、小堀桂一郎八木秀次が選んでいて、これも時代的なものなのだろうか。

 渡邊恒雄の選書は知らない人には驚きかもしれないが、渡邊は開成中学時代、文学を諦め哲学に転向するという事があって、ショーペンハウエルなどをよく読んでいた。軍隊に招集された時も、カントの『実践理性批判』とブレイクの詩集を持ち込んだりした。そうした読書遍歴は、『渡邊恒雄回顧録』に書いてある。

 

 

諸君 ! 2007年 10月号 [雑誌]

諸君 ! 2007年 10月号 [雑誌]

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/09/01
  • メディア: 雑誌
 

  

渡邉恒雄回顧録 (中公文庫)

渡邉恒雄回顧録 (中公文庫)