デュウェイン・ホージー 『ワルが目醒めるとき』

 君はホージーを覚えているだろうか? あの、97年から98年にかけてヤクルトにいた「面白助っ人外国人」のホージーである。キャンプ中から野村監督に酷評され、まったく期待されていなかったのが、シーズンが始まると予想外の大活躍。結果的に松井を破りホームラン王を獲得し、チームの日本一にも貢献した(同僚の新外国人、ルイス・オルティスは途中で解雇された)。

 シーズン前から陽気な性格で知られていたが、シーズンに入ると、ファンから貰ったプリクラでヘルメットを埋め尽くしたり、「太郎」というあだ名を付けられたりして、瞬く間に人気者になった。そのため、98年の4月には彼の自伝が二冊も出版された。『ワルが目醒めるとき』(ザ・マサダ)と『ホージー太郎一代記―1997年ペナントレースの秘密』(雲の間にある虹出版)である。今回、私は前者の方を読んだ。

 内容を簡単にまとめると、幼いころ両親が離婚し、ロサンゼルスのゲットーで育てられたホージーが、ブラッズというギャング団に加入し、その後アメフトのプロを目指すも、遊び半分でやっていた野球でスカウトに目をつけられ、ホワイトソックスのマイナーに入団(守備が下手だったのは、野球を真剣に始めた時期が遅かったからだろうか)。メジャーを目指し奮闘するも、メジャー昇格と同時にストライキに直面。ストライキ解除後は、即マイナー降格、成績低迷で、日本行きを決意。オファー自体は94年頃からあったらしく、阪神ダイエー、広島が狙っていたとか。

 自伝の中では、メジャーを狙える選手として、イチロー、佐々木、松井、石井一久、西口を挙げている。選手を見る目は確かだ。

 明るい性格だから、日本人ともすぐに打ち解け、カラオケでSMAPの「ダイナマイト」を持ち歌にしていたぐらいだが、落合とだけはダメだったらしい。

 本書のタイトルが『ワルが目醒めるとき』になっているのは、ホージーがギャングから更生し、敬虔なキリスト教徒になったからだろう。ギャング時代はギャングスタ・ラップをよく聞いていたらしいが、今はいわゆるクリスチャン・ミュージックばかり聞いているようだ。この本の最後も、キリスト教に関する挿話で締めている。気楽に読める本なので、マイナーリーグとか当時のヤクルトとかに興味がある人は読んでみて損はないだろう。

 

ワルが目醒めるとき

ワルが目醒めるとき

 

  

ホージー太郎一代記―1997年ペナントレースの秘密

ホージー太郎一代記―1997年ペナントレースの秘密

 

 雲の間にある虹出版はキリスト教専門の出版社で、ホージー自身がキリスト教徒だから、企画・出版されたのだろう。

 

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ホージーといえば、この珍プレー。