2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

宮本陽吉 『アメリカ最終出口』

アメリカ文学者で、ジョン・アップダイクやフィリップ・ロスの翻訳などをしている著者の批評的エッセイ集。タイトルは宮本自身が翻訳したヒューバート・セルビー・ジュニアの『ブルックリン最終出口』からとられているのだろう。宮本は、本書の3年前に『ア…

椎名林檎のイメージ戦略

1 誠治さん、と彼女は言った 椎名林檎がライブで「丸の内サディスティック」を演奏する時、ベースソロに入る直前に(もしくはその最中)、ベーシストである亀田誠治の名前を呼ぶことがある。その際の呼び方だが、実は時期によって微妙に異なっている。例え…

クレメンス・デビッド・ハイマン 『リズ』

女優の奥菜恵が3月13日に結婚を発表した。奥菜はこれで3度目の結婚になる。 結婚と離婚を繰り返した女優といえば、エリザベス・テイラーだ。彼女は7人の男性と8回結婚し、8回離婚した強者である。そんな彼女の人生を知るにはC・デビッド・ハイマンが…

フィリップ・デイヴィス 『ある作家の生 バーナード・マラマッド伝』

20世紀アメリカを代表するユダヤ系作家として、よくセットで取り上げられるのがソール・ベロー(1915-2005)、バーナード・マラマッド(1914-1986)、フィリップ・ロス(1933-)だ。かつてベローはそういう状況に苛立ち、「文学版ハート・シェフナー・マーク…

HOOTERSにうってつけの日

赤坂のHOOTERSに5時間いてみろFOODが旨えのは最初のHALF TIMEショーまで後はソースをペタペタさせたり拭いたり繰り返すだけの幼児退行ひでえよSHIT! Jazz Dommunisters「Food」 花の金曜日。待ち合わせ場所である飯田橋に同い年の友人Mがやってきた。Mは…

ストーカー──被害者と加害者の心理について

止まれない男たち──「片思い」と「生きる意味」で紹介した小説「悲望」(あらすじはそっちに書いた)だが、そこにこんな箇所がある。 私が篁さんに惹かれた原因の一つに、彼女の孤立があった。彼女と同学年の人たちは、研究室の「保守的」な気風に合っていな…

止まれない男たち──「片思い」と「生きる意味」

往復書簡という形で作家のミシェル・ウエルベックとも共著を出したことがある哲学者ベルナール=アンリ・レヴィに『危険な純粋さ』(邦訳、紀伊國屋書店)という本がある。これ自体はユーゴスラビア紛争やイスラム過激派について扱った批評エッセイだが、タイ…