2016-01-01から1年間の記事一覧

野球選手とメディア

日本ハムファイターズが優勝した。 ファイターズ・ファンの俺としては嬉しいことだ。 そんな中で気になったのは、メディアの注目が大谷へと異常に集まっていることだ。ニュース記事はもとより、試合中も幾度となくベンチにいる大谷にカメラが向けられた。鼻…

フィリップ・ロス原作映画ヒット祈願

今年はフィリップ・ロス原作の映画が二本も公開される。一本はIndignationで、監督は『ハルク』や『ブロークバック・マウンテン』のプロデューサーを務めたジェームズ・シェイマスだ。これが初監督作となる。シネマトゥデイによれば、内容は以下の通り。 195…

オルギア視聴覚室

昨日、池袋のシアター・グリーン(BASE THEATER)で開催された「オルギア視聴覚室」という演劇イベントを観に行った。ツイッターでフォローしている人たちが関わっているということと、小劇場的なものを体験してみたかった、というのが観劇のきっかけである…

遠山純生編 『映画監督のお気に入り&ベスト映画』

ツイッターでフォローしている人がこの本に言及していたので、図書館で借りてみた。 中身は、評論家がタランティーノやウォン・カーウァイの映画遍歴について書いたものや、エリック・ロメール、キアロスタミといった有名監督が映画について書いたエッセイの…

秋津弘貴 『プロ野球記者会にいると絶対に書けない話』

ジャーナリストの秋津弘貴が『月刊リベラルタイム』に連載していた野球コラムを加筆し、まとめたのが本書である。中身は、「愛すべきスーパースター「長嶋茂雄」」、「名伯楽「仰木彰」の伝説と遺産」といった過去に焦点をあてたものから、「日本一「中日ド…

金村義明 『80年代パ・リーグ 今だから言えるホントの話』

金村義明と言えば、タレント兼野球解説者として、バラエティ番組などでもよく見かけるが、本書はそんな彼が文字通り「80年代パ・リーグ(一部90年代ネタもあり)」について面白おかしく語ったものだ。 テレビでも近鉄時代の裏話についてはよく喋っている…

育てたいという欲求

今、楽天では梨田監督がオコエを連日スタメンに起用しているけど、ここには梨田の「育てたい」という欲求があると思う。チーム状況的に、オコエがスタメンになってもおかしくはないんだけど、枡田、島内、牧田、聖沢といった中堅クラスの選手がいるなかで、…

愛甲猛 『球界のぶっちゃけ話』

印象としては『球界の野良犬』の姉妹編というか、落穂拾いといった感じ。あっちは自伝的な色合いが強かったけど、こっちは球界全体の話になっている。 例えば、第一章「暗黙のルール」では、ベンチ内における人間関係について触れている。愛甲によれば、選手…

古田が監督に向いていないと考えるいくつかの理由

名捕手=名監督という図式がプロ野球界には根強く残っている。野村克也、森祇晶、そして最近では伊東勤もその仲間に入りそうである。そのため、ヤクルトでは結果を残せなかった古田が、再度監督に挑戦することを期待している人は多い。だが、僕は古田という…

村上春樹とブライアン・ウィルソン──「サーフィンUSA」が見せた夢

村上春樹がビーチ・ボーイズについて書いた文章はいくつかあるが、ここでは以下の二つを中心に取り上げたい。一つ目は、『季刊アート・エクスプレス』1994年夏号に掲載された「神話力、1963、1983、そして」(以下「神話力」)。そして、二つ目…

中上健次の文芸時評

中上健次はマガジンハウスから出版されていた『ダカーポ』という雑誌で文芸時評を連載していたことがある。最初で最後の文芸時評だ。連載期間は1988年11月2日号から1989年11月1日号までの1年間で、連載回数は25回。 同時期には『朝日ジャー…

季刊アート・エクスプレス 1994年No.3 小沢健二×柴田元幸

『アート・エクスプレス』1994年夏号(No.3)では、「ロックには何もやるな」という特集を組み、様々な評論や対談を載せている。主な寄稿者は、村上春樹、日比野克彦、鷲田清一、沼野充義、管啓次郎、小沼純一、大澤真幸、北中正和など。そして、対談は…

ロッキング・オン 2009年10月号 渋谷陽一×粉川しの

少し前に増井修の『ロッキング・オン天国』を取り上げたついでに、これも紹介しておこう。『ロッキング・オン』2009年10月号では、「創刊500号 記念特別号!!」と題して、過去の記事やインタビューを再録し、これまでロッキング・オンが歩んできた…

増井修 『ロッキング・オン天国』

1972年8月に創刊された『ロッキング・オン』は、もともと素人による投稿を中心とした音楽批評誌だった。それが創刊者渋谷陽一の才覚によって、売れ行きを伸ばしていき、76年には『ロッキング・オン』を正式に会社化、社員数2名ながら出版業界に本格…

LES SPECS 1992年11月号 小沢健二×柴田元幸

小沢健二が東大時代、柴田元幸のゼミにいたことはよく知られている。小沢は1968年生まれだが、1浪しているので、大学入学は1988年。その後1留したから、卒業したのは1993年春ということになる。フリッパーズ・ギターが解散したのは大学在学中…

印南敦史 『音楽系で行こう!』

この前ふと印南敦史の名前をグーグル検索したら、ライフハッカーでビジネス書の書評をしていて驚いた。彼のことは、ブラック・ミュージックをメインに扱う音楽ライター、というような認識をしていたからだ*1。『遅読家のための読書術』という本も売れている…

田村章 中森明夫 山崎浩一 『だからこそライターになって欲しい人のためのブックガイド』

ライター業に興味があったので読んでみた。何年か前に小谷野敦『評論家入門―清貧でもいいから物書きになりたい人に』(平凡社新書、2004)を読み、物書き稼業の過酷さについてはある程度知っていたが、1995年に出版された本書を読んで、その認識はま…

洋服=布と考えているあなたに──ブックオフ・スーパーバザー讃歌

「ただの布だぜ!?」。某情報番組にて、1万円越えの高級Tシャツを見た、Kinki Kidsの堂本光一は、こう叫んだ。 そう、洋服なんてただの布でしかない。ボクと堂本の年収は100倍ぐらい差があるが、まったくの同意見である。ウィー・アー・ミニマリスト。…

ローリング・ストーンズとヘルズ・エンジェルス

www.youtube.com 1969年にオルタモント・スピードウェイで開催されたローリング・ストーンズのフリーコンサートでの様子。ステージと客席が区別がつかないほど近い。このライブは警備に関わっていたヘルズ・エンジェルスが大暴れし、その結果客に死傷者…

A・E・ホッチナー 『パパ・ヘミングウェイ』

本書は、作家のA・E・ホッチナーが、『コスモポリタン』の編集スタッフとしてヘミングウェイに会いに行った1948年から彼が自殺する1961年までの交流を描いたメモワールで、ヘミングウェイの晩年の生活を知るうえで大変貴重な資料だ。 1948年の…

ノーマン・メイラー 『黒ミサ』

ノーマン・メイラーの『黒ミサ』(原題:Trial of the Warlock)は、これまで日本語に翻訳されてきた彼の著作の中でも、最も知名度が低い作品だと思う。メイラーの翻訳は、だいたい新潮社か早川書房から出ているが、これは集英社から出版された。もともと『…

橋本福夫 『橋本福夫著作集Ⅰ』

橋本福夫(1906-1987)と言えば、ジェームズ・ボールドウィンやリチャード・ライトといったアメリカ黒人文学の翻訳者としてのイメージが強かったのだが、彼の死後編まれた著作集の第一巻が「創作・エッセイ・日記」をまとめた物であることを知り、…

西川正身 『アメリカ文学覚え書 増補版』

本書は、アメリカ文学者で翻訳も多く手掛けた西川正身がこれまで戦前から戦後にかけて雑誌などに書いてきた、アメリカ文学に関する批評文を集めたものだ。メルヴィルやフランクリン、マークトゥインといった正統派アメリカ文学を取り上げているが、実はそう…

ポール・ニューマンとアカデミー賞

2016年に行われた第88回アカデミー賞受賞式では、これまで4度候補に挙がりながらオスカー像を逃し続けてきたレオナルド・ディカプリオが、5度目のノミネートで遂にアカデミー主演男優賞(『レヴェナント: 蘇えりし者』)を受賞したことが話題になっ…

青春について語ることは、恥ずかしさとサリンジャーについて語ることだ

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE 青春というのは気恥ずかしいものだ、という共通認識が世間にはある。若さゆえの過ち。だからこそ、若い時の恥ずかしい思い出は、大人になってからの恥ずかしい思い出よりも、堂々と発表できる。青春について語れと…

パトリシア・ボズワース 『マーロン・ブランド』

マーロン・ブランドは1924年、ネブラスカ州オハマで生まれた。家族構成としては、両親の他に二人の姉がいる。母親のドディはブランドが小さい頃──時には家族そっちのけで──演劇に熱中していた。彼女は芸術家肌だったが、セールスマンの夫はそれに対し無…

ジャン=ジャック・ベネックス『オタク』の裏側

リリー・フランキーの『美女と野球』に入っているエッセイ「フランスのおっさん」(初出は「クロスビート」93年11月号)には、リリーがオタクのドキュメンタリーを撮りに日本へやってきたジャン=ジャック・ベネックスをアテンドした時のことが書かれて…

アンディ・ウォーホルと「臆病さ」について

「ウォーホルはとても臆病な人間だ」。それがフレッド・ローレンス・ガイルズの『伝記 ウォーホル―パーティのあとの孤独』を読んだ時の感想である。彼の人生は虚偽に塗れていた。銀髪のかつら、鼻の整形、出身地の詐称…… これらの嘘は自分を保護するためのも…

マドレーヌ・シャプサル 『作家の仕事場』

本書は作家としても知られるマドレーヌ・シャプサルが、自身もスタッフとして関わっている文芸誌「エクスプレス」で、1960年から1963年頃に行ったインタビューをまとめたものだ。インタビュイーは原著だと15人だが、邦訳を出すにあたって2人ほど…

ポール・アレクサンダー 『ジェームズ・ディーン 破れた夢の道』

ジェームズ・ディーンの伝記を読んでみようと探していたら、翻訳されているものでは、ポール・アレクサンダーの物とドナルド・スポトーの物が見つかった。原著の発表は前者の方が早い。そして、アマゾンではアクレサンダーの物がかなり酷評されている。気に…