育てたいという欲求

 今、楽天では梨田監督がオコエを連日スタメンに起用しているけど、ここには梨田の「育てたい」という欲求があると思う。チーム状況的に、オコエがスタメンになってもおかしくはないんだけど、枡田、島内、牧田、聖沢といった中堅クラスの選手がいるなかで、あえて起用するというのは、オコエを優先的に育てようという意思があるからだろう。守備・走塁はともかく、オコエの打撃はまだまだだしね。だから、控えに回された選手の中には、監督に反発を持っているということも十分あり得る。元近鉄金村義明は、同じポジションを守る中村紀洋が入団した時、口もきかなかったらしい。この辺をどう調整するかが、監督としての手腕が問われるところだ。

 監督やコーチというのは、チームを勝利に導けば当然評価されるわけだけど、それ以外に「○○を育てた」ということも評価の対象になる。「師弟関係」というのは、マスコミにとっても取り上げやすいトピックだ。古くは荒川─王から、野村─古田、長嶋─松井というような形があり、また、こうした関係を築くことは、「派閥」にも繋がっていったりする。ただ、「師弟関係」によって築かれた派閥は、弟子の方が強くなり過ぎると崩壊するので、そこらへんは少し複雑なのだが。いわゆる「両雄並び立たず」というやつだ。巨人において、川上と長嶋・王が対立したのも、そういうことだろう。

 オコエが育てば、それだけで梨田やコーチの池山は球史に名を残すだろう。菅野とか田中将大なんかは、どの球団に入っても活躍しただろうなという感じがするが、オコエは素材型の選手なので、余計に「育成した」感が出る。オコエがスーパースターになれば楽天にとって大きな利益になる。育てた梨田や池山は、球団に対していい顔ができるし、他球団からより良い条件でリクルートされることだってあり得る。勿論、オコエに対しても影響力を持つことができる。そういうことまで考えて、オコエを起用しているのだと僕は考えている。「育てたいという欲求」は、結構俗っぽい心理から生まれるものだ。