「逆張り」の魅力と意義

 どうも~。ふらぐめんつの藤山と申します。会社員やりながらコントとか書いたりしていま~す。

 最近、2冊本を読んだんですが、その2冊がテーマ的に似ているんじゃないかなと思い、また自分がよく考えていることにも近いということで、今回取り上げさせてもらいたいと思います。

 1冊目がね、綿野恵太『「逆張り」」の研究』。これがどういう本かというと、「本書は、逆張りくんとからかわれ、逆張り特集の逆張り担当に指名された、逆張り当事者による逆張りの研究である。逆張りの、逆張りによる、逆張りのための研究である」という風にまえがきに書いてあるんですね。

 まあ、その、「逆張り」という言葉がいかに定義なく使用され、意味合いが変化していったかということを、主に作者の周辺から具体例を提示しつつ時代ごとに辿っていく、そういう本ですね。簡単にいえば。

 題名に「研究」とありますけど、本人も言っている通り「エッセイ」なんで、結構パーソナルなことが書いてあってそこも興味深かったですね。実は、綿野さんとは一時期O田出版というところで一緒に働いていたことがあったんで、余計に私小説的な読み方をしたところもあったかもわからないですが、一番筆が乗ってるのもそういう部分だとそういう部分であると言わざるを得ない可能性がございます。

 本書では、様々な「逆張り」の用法が挙げられていて、不肖・藤山も自他共に認める「逆張り人間」をやらせていただいているんですが、自分が理想としている「逆張り」というのがあって、勝ち筋の見えない逆張り、こういうのに強く惹かれてしまいますね。本書の中でも扱われてますけど、「こいつと反対のことを言っておけば安心だ」みたいなそういう最初から支持者や共感者が見えてしまっている脳死逆張りはつまらないんですね。あなた言ってやったぜみたいな顔してるけど、めっちゃ周囲に目くばせしてますやん、みたいな。笑いの世界で言えば、ベタに対してベタで返すような感じなんで。

 自分がなぜ「逆張り」をするのかというと、他人の作った文脈に乗っかりたくない、というのが非常に大きいですね。小松海佑の言葉を借りるなら、「大勝負でもあり、強がりですよ」と。なので、ワイが逆張りするときは、僕の前に道はない 僕の後ろに道はできる だけど誰もついてこない、そういう感じで行きたいと思ってるんですよね。最初に下心ありきの逆張りってめちゃくちゃ醜いですから。

 というわけで、2冊目の紹介に行きたいんですが、これが柴崎裕二『ポップミュージックはリバイバルをくりかえす』ですね。

 これは今年読んだ本のなかで最も知的興奮をもたらしてくれた一冊です。サブタイトルに「『再文脈化』の音楽受容史」とあるように、ミュージシャンが過去に蓄積されてきた音楽遺産を、どのように解体し、自分の音楽に取り入れてきたかということを、豊富な実例を挙げて解説しているんですが、「こことここが繋がっていくのか!」という、まるで手品の種を見せてもらっているかのような読書体験でした。

 えー、ではここで「逆張り」というテーマに無理やり繋げさせていただきますが、本書を読んだ限り、ミュージシャンという人種も、結構逆張り的な選択をしていることが多いんじゃないかなと。基本、もうみんなが忘れ去ってしまったようなものを、リバイバル(=再文脈化)しようとするんですよね。

 例えば、1990年代に発生したオルタナカントリーというジャンルがあるんですけど、それなんか逆張りの最たるものだと思います。

 

 オルタナカントリーは、先行するオルタナロック世代のバンド、例えばリプレイスメンツなどの影響が特に大きかったとされるが、その根底には、「カントリーミュージックの失われてしまった(忘却されてしまった)カウンター性を取り戻す」という姿勢が滲んでいた。

 これは、かつて1960年代末に現れた初期カントリーロックの理念とも重なり合うものであり、実際にオルタナカントリーのプレイヤー/ファンともども、グラム・パーソンズをその始祖として崇拝する傾向があった。1990年代のポップな主流カントリーが「産業にその本質を骨抜きにされたカントリー」であるとすれば、オルタナカントリーはそれへのアンチテーゼであり、かつてカントリーミュージックの生命力をロックという「反権威」と接合することで賦活したパーソンズこそは、直系の先祖ということになる。(柴崎裕二『ポップミュージックはリバイバルをくりかえす』p88)

 

 ここで取り上げられているUncle Tupeloというバンドは、1987年に活動を開始しているんですけど、やっぱりその時代にカントリーを取り入れようと思ったのが、僕的にはすごく良い「逆張り」なんですよね。今同じことやってもWilcoの影響力がまだまだ強いんで大して「逆張り」にならないですけど、1990年前後にインディー・ロックのフィールドでカントリーを取り入れるって、相当強い意思を持ってないとできないことですから(細かいことを言うと、The Mekonsのような先駆者はいたけど)。

 ワイの好きなバンドでBlack Flagっていうハードコア・パンク・バンドがいるんですけど、この人たち最初はいかにもパンクっぽい2分未満の早くて短い曲を演奏していて、それですごく持て囃されていたんですが、ある時思想的には真逆にあるはずのヘヴィー・メタルを取り入れるという、パンク・ファンを振り落とすような「逆張り」をして、それがすごくかっこよかったんですね。そういう「支持する人間はいないかもしれないが、やりたいことをやる」っていう姿勢にすごく惹かれてしまいますね、ぼかぁ。だいたいそういう人が歴史変えてますから。

 結局、なんの話がしたいかというと、バランスの話なんですね。みんながみんな「順張り」して、同じ方向を向くと、世の中のバランスがおかしくなってしまいますから。なにか起きた時、全員が沈みますから。なので、ワタクシも微力ながらこれからも積極的に「逆張り」に励まさせていただく所存でございます。ありがとうございました。

 

 

www.youtube.com

www.youtube.com

www.youtube.com