2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

A・E・ホッチナー 『パパ・ヘミングウェイ』

本書は、作家のA・E・ホッチナーが、『コスモポリタン』の編集スタッフとしてヘミングウェイに会いに行った1948年から彼が自殺する1961年までの交流を描いたメモワールで、ヘミングウェイの晩年の生活を知るうえで大変貴重な資料だ。 1948年の…

ノーマン・メイラー 『黒ミサ』

ノーマン・メイラーの『黒ミサ』(原題:Trial of the Warlock)は、これまで日本語に翻訳されてきた彼の著作の中でも、最も知名度が低い作品だと思う。メイラーの翻訳は、だいたい新潮社か早川書房から出ているが、これは集英社から出版された。もともと『…

橋本福夫 『橋本福夫著作集Ⅰ』

橋本福夫(1906-1987)と言えば、ジェームズ・ボールドウィンやリチャード・ライトといったアメリカ黒人文学の翻訳者としてのイメージが強かったのだが、彼の死後編まれた著作集の第一巻が「創作・エッセイ・日記」をまとめた物であることを知り、…

西川正身 『アメリカ文学覚え書 増補版』

本書は、アメリカ文学者で翻訳も多く手掛けた西川正身がこれまで戦前から戦後にかけて雑誌などに書いてきた、アメリカ文学に関する批評文を集めたものだ。メルヴィルやフランクリン、マークトゥインといった正統派アメリカ文学を取り上げているが、実はそう…

ポール・ニューマンとアカデミー賞

2016年に行われた第88回アカデミー賞受賞式では、これまで4度候補に挙がりながらオスカー像を逃し続けてきたレオナルド・ディカプリオが、5度目のノミネートで遂にアカデミー主演男優賞(『レヴェナント: 蘇えりし者』)を受賞したことが話題になっ…

青春について語ることは、恥ずかしさとサリンジャーについて語ることだ

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE 青春というのは気恥ずかしいものだ、という共通認識が世間にはある。若さゆえの過ち。だからこそ、若い時の恥ずかしい思い出は、大人になってからの恥ずかしい思い出よりも、堂々と発表できる。青春について語れと…

パトリシア・ボズワース 『マーロン・ブランド』

マーロン・ブランドは1924年、ネブラスカ州オハマで生まれた。家族構成としては、両親の他に二人の姉がいる。母親のドディはブランドが小さい頃──時には家族そっちのけで──演劇に熱中していた。彼女は芸術家肌だったが、セールスマンの夫はそれに対し無…

ジャン=ジャック・ベネックス『オタク』の裏側

リリー・フランキーの『美女と野球』に入っているエッセイ「フランスのおっさん」(初出は「クロスビート」93年11月号)には、リリーがオタクのドキュメンタリーを撮りに日本へやってきたジャン=ジャック・ベネックスをアテンドした時のことが書かれて…

アンディ・ウォーホルと「臆病さ」について

「ウォーホルはとても臆病な人間だ」。それがフレッド・ローレンス・ガイルズの『伝記 ウォーホル―パーティのあとの孤独』を読んだ時の感想である。彼の人生は虚偽に塗れていた。銀髪のかつら、鼻の整形、出身地の詐称…… これらの嘘は自分を保護するためのも…

マドレーヌ・シャプサル 『作家の仕事場』

本書は作家としても知られるマドレーヌ・シャプサルが、自身もスタッフとして関わっている文芸誌「エクスプレス」で、1960年から1963年頃に行ったインタビューをまとめたものだ。インタビュイーは原著だと15人だが、邦訳を出すにあたって2人ほど…

ポール・アレクサンダー 『ジェームズ・ディーン 破れた夢の道』

ジェームズ・ディーンの伝記を読んでみようと探していたら、翻訳されているものでは、ポール・アレクサンダーの物とドナルド・スポトーの物が見つかった。原著の発表は前者の方が早い。そして、アマゾンではアクレサンダーの物がかなり酷評されている。気に…