2012-01-01から1年間の記事一覧

ノーマン・メイラー 『死刑執行人の歌』

主要登場人物表 ゲイリー・ギリモア・・・殺人犯 自ら死刑を要求する ニコール・ベイカー・・・ゲイリーの恋人 自殺未遂を起こし、精神病院に収容される エイプリル・ベイカー・・・ニコールの妹 キャスリーン・ベイカー・・・ニコールの母 スターリング・ベ…

柳下毅一郎 『シー・ユー・ネクスト・サタデイ』

「映画館の暗闇は鬱屈を抱えてうずくまるものだった」と柳下毅一郎は言う。映画鑑賞とは、ひどく個人的な行為であり、決して明るいものではない。映画は誰かを救うことはできない。映画を見ることに根本的かつ前向きな意味を見いだせる者は、この世に存在し…

青山南 『ホテル・カリフォルニア以後』

「ホテル・カリフォルニア」という象徴的な言葉がタイトルがつけられた本書は、70年代アメリカ文学の解説書だ。一つのムーブメントを生み出したベトナム戦争が終わりを迎え、小説もまた新しい方向性を模索し始めた70年代。青山は、リアルタイムでアメリ…

ノーマン・メイラー 『アメリカの夢』

本書『アメリカの夢』は、元々エスクァイアに連載されていたものだ。アメリカでは、日本のように長編小説を締切に合わせ、雑誌に「連載する」という習慣がないものだから、メイラーの試みは結構注目された。ディケンズの真似ともいわれたが、本人はドストエ…

マーティン・エイミス 『ナボコフ夫人を訪ねて』

イギリス人は、皮肉の達人と言われている。だけど、それはどこで確認できる? ビートルズを聞けばいいのか、それともモンティ・パイソンを見ればいいのか? いやいや、マーティン・エイミスを読めばいいのだ! 『ナボコフ夫人を訪ねて』は、雑誌に寄稿した文…

ノーマン・メイラー 『ぼく自身のための広告』

1 日本において、ノーマン・メイラーはすっかり忘れ去られてしまった。それはここ最近の出来事ではなく、30年ぐらい前から、そんなポジションに入っている。昔は、新潮社から全8巻の全集が出るほどだったのに、後期の大作(Ancient EveningsやHarot's Ghost…

中原昌也 『ボクのブンブン分泌業』

中原昌也という存在を、うまく掴みとれない人も多いかもしれない。ある時はノイズ・ミュージシャン、ある時は映画評論家、ある時は小説家、ある時はイラストレーター…… そんな風に多彩な側面を見せる彼だが、本書を読めば、彼の抱えている困惑や怒りについて…

バーバラ・コップル 『ワイルド・マン・ブルース』

ウディ・アレンが率いるニューオーリンズ・ジャズ・バンドの、ヨーロッパ・ツアーを追った、1997年製作のドキュメンタリー。映画監督としてではなく、ジャズ・ミュージシャンとしてのアレンを追跡するというのが、いささか変則とした作りになっているが、な…

川本三郎 村上春樹 『映画をめぐる冒険』

村上春樹には、いくつか封印された文章があるが(有名どころでは、「街と、その不確かな壁」と「芥川賞について覚えているいくつかの事柄」)、恐らく本書もその部類に入るだろう。需要は間違いなくあるのに(古書店でプレミアがついている)、一体これが絶…

植草甚一 『アメリカ小説を読んでみよう』

雑学の大家植草甚一が、自分の好きなアメリカ小説(他の外国文学も少し出てくる)を語るエッセイ集。カバーの絵がノーマン・メイラーなのは、時代を象徴していて、ここに出てくる作家のほとんどが50年代から60年代の現代(当時)作家たちだ。テネシー・…

ウリ・エデル 『ブルックリン最終出口』

ドイツ人映画監督ウリ・エデルが、ヒューバート・セルビーJrの『ブルックリン最終出口』を原作に、1990年に発表。監督としては、『クリスチーネF』に続き2作目である。 舞台は1952年のニューヨーク、ブルックリン。冒頭から、チンピラたちが、酔…

ミチコ・カクタニ 『仕事場の芸術家たち』

今ではアメリカ文学界を代表する評論家となったミチコ・カクタニの処女作。元々はジョン・アップダイクの章を除いて、ニューヨーク・タイムズ紙の記事である。ここで扱われているのは、作家、映画監督、劇作家、俳優といった職業の裏側だ。彼女は38人もの芸…

ジョン・ファンテ 『塵に訊け!』

世の中には、是が非でも作家になりたいという人種がいる。そして、そんな人種が書く小説となれば、作家志望の青年(つまり自分)が主人公となるのは当然だ。ジョン・ファンテの『塵に訊け!』もそういう小説である。 主人公バンディーニは、ロサンゼルスの安…

フィリップ・ロス 『ダイング・アニマル』

フィリップ・ロスは老いてなお盛ん、いや盛んであろうとしている。ロスの描く主人公たち(限りなくロスの分身)は、作品毎に彼と同様年を重ねていくが、「老い」を素直に受け入れることができない。なぜなら、女がいるからだ。しかも、自分より二回りも若い!…