フィリップ・ロス原作映画ヒット祈願
今年はフィリップ・ロス原作の映画が二本も公開される。一本はIndignationで、監督は『ハルク』や『ブロークバック・マウンテン』のプロデューサーを務めたジェームズ・シェイマスだ。これが初監督作となる。シネマトゥデイによれば、内容は以下の通り。
1950年代、朝鮮戦争下のニュージャージー州ニューアークに住む18歳の青年マーカス(ローガン・ラーマン)が、自殺未遂の過去があるオリヴィア(サラ・ガドン)や大学学部長コードウェル(トレイシー・レッツ)と出会ったことから起きる、思いがけない大学生活を描いている。2008年に出版された作家フィリップ・ロスの同名小説を映画化した。*1
もう一本は、『トレインスポッティング』などで知られる俳優のユアン・マクレガーが監督したAmerican Pastoral 。これも初監督作品。内容は以下の通り。
『アメリカン・パストラル(原題)』は、父は学生時代のスポーツヒーローで、成功したビジネスマン(ユアン)、母は美人コンテストの優勝者(ジェニファー・コネリー)という絵に描いたような完璧なアメリカ人一家が、ベトナム戦争に影響されて暴力的な抗議活動に身を投じた娘(ダコタ・ファニング)によって崩壊させられるさまを描いたドラマ。*2
スター俳優の初監督作品であり、原作がピューリッツァー賞を受賞していることから、American Pastoral の方は日本でも公開されるのではないだろうか。Indignationにも期待したいところ。僕としては、映画が日本で公開され、未訳の原作が翻訳・出版されるのが一番好ましい。
海外文学は基本的にあまり売れないので、きっかけがないとなかなか翻訳・出版されにくい。「映画原作」の冠は売り文句になるが、肝心の映画がこけると意味がなくなってしまう。まずは、翻訳のために、映画のヒットを願うしかない。頑張れ、シェイマス、マクレガー。
ロスの作品は、90年代以降に出版されたものが、未訳であることが多い。最近では、村上柴田翻訳堂シリーズの一冊として『素晴らしいアメリカ野球』が復刊されたり、内田樹効果?で、『プロット・アゲインスト・アメリカ』がそこそこ売れたりしたようなので、他の作品にも期待したいところだ。特に全米図書賞受賞作であるSabbath's Theaterや、元妻クレア・ブルームについて書いたと言われるI Married a Communist、自伝的作品The Facts: A Novelist's Autobiographyを読んでみたい。ちなみに、クレア・ブルームにもLeaving a Doll's House: A Memoirというそのものずばりなタイトルの自伝があって、そこでロスとの生活について詳しく書いているようなので、それも翻訳されてほしいなあ。
Leaving a Doll's House: A Memoir
- 作者: Claire Bloom,Bill Phillips
- 出版社/メーカー: Little Brown & Co (T)
- 発売日: 1996/11
- メディア: ハードカバー
- この商品を含むブログを見る