野球選手とメディア

 日本ハムファイターズが優勝した。

 ファイターズ・ファンの俺としては嬉しいことだ。

 そんな中で気になったのは、メディアの注目が大谷へと異常に集まっていることだ。ニュース記事はもとより、試合中も幾度となくベンチにいる大谷にカメラが向けられた。鼻くそをほじる暇もないくらい、大谷は監視されている。

 前にクロマティの自伝を読んだことがある。『さらばサムライ野球』という本だ。その中で面白かったのは、巨人の選手たちがいかにメディアの目を気にしているか、ということを書いた箇所だ。彼らは試合で活躍すると、次の日、ロッカールーム等で、スポーツ新聞の一面を必ず確認する。大きく扱われていれば嬉しいし、冷淡な扱いをされていれば当然憤慨する。クロマティ自身もしょっちゅう確認していた。

 だが、ここで問題が一つ起こる。メディアとしては、中途半端な選手の活躍よりも、例えば、原辰徳の三振の方を記事にする。スターというのは一挙手一投足全てに注目が集まる存在であり、注目されるからこそスターでもある。活躍したのに取り上げられない選手からすれば、何とも不公平な話だ。だから、当時の巨人では、原に対する嫉妬がチームメイトの間にわだかまっていた。

 大谷についても、ファイターズ内で同じことが起こっているのではないかと、俺は心配している。それを表に出す選手はいないだろうが、どんな試合でも大谷がトップに扱われ、活躍した自分が無視されるという状況に、プライドの高い野球選手がいつまでも耐えられるだろうか。チームメイトは仲間でもあるが、同時にライバルでもある。だが、大谷は最早日本の選手では追いつけないような場所にまで達してしまった。選手たちの大谷に対する反応といえば「あれは別格」というような、半ば賞賛・半ば呆れるといった感じだ。ダルビッシュのファイターズ在籍時代の末期もそんな空気が漂っていた。日本の野球に大谷は収まらなくなっている。来年は日本でプレーするとのことなので、再来年にはメジャーに挑戦してもいいのではないだろうか。俺個人としては、打者でいってほしい。空振りにさえロマンを感じさせる選手は、大谷しかいないからだ。

 

 

さらばサムライ野球

さらばサムライ野球