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中原昌也 『ボクのブンブン分泌業』

日本文学

 中原昌也という存在を、うまく掴みとれない人も多いかもしれない。ある時はノイズ・ミュージシャン、ある時は映画評論家、ある時は小説家、ある時はイラストレーター…… そんな風に多彩な側面を見せる彼だが、本書を読めば、彼の抱えている困惑や怒りについて理解できるはずだ。

 例えば、「人生至る所に青山あり」では、青山に住んでいるというだけで金持ちだとみなされることに対し不満を表明したり、「これからはデス中野系ですよ」という某雑誌編集者のあまりにも捻りのない発言に絶句したりする。中原が嫌うのは、ある一部分だけを切り取った安易で軽薄な断定だ。彼は今までそういったものと格闘し続けてきたのである。Z級映画を紹介すればモンド系と見なされ、音楽をやればデス渋谷系なるレッテルを貼られ、小説を書けばJ文学に押し込まれる。中原を得体の知れないイロモノと見なす人々は、こうして彼を一つのカテゴリーに仕舞い込まなければ、我慢できないのだ。そうした行為は、中原のもっとも嫌うところである。彼の理想は混沌なのだから。

 バロウズの追悼文から、小学校の卒業文集まで掲載されている本書は、読み進めていく内に中原の個人史のようなものが浮かび上がってくる。一見、単なる雑文の寄せ集めにも思えるが、最終的にはばらばらだったパズルのピースが全てはまり、一個の強烈な世界が出来上がるのである。言ってみれば、連作短編みたいなものか(実際、フィクションも混ざっている)。個人史というと、2011年に『死んでも何も残さない―中原昌也自伝』が出版されたが、中原的混沌を体験したいなら断然本書だろう。日常のぼやきから、対談まで、中原節は留まることを知らない。本書は中原の本質を理解する上で、『中原昌也 作業日誌 2004→2007 』と同じくらい重要だ。

 

ボクのブンブン分泌業

ボクのブンブン分泌業