海外文学

ソール・ベロー 『この日をつかめ』

ソール・ベローの作品で何か一つ薦めるとしたら、俺は迷わず本書を選ぶだろう。ボクは邦訳されているベローの作品は全て読んだが、彼の長編小説は基本的に冗長でペダンティックだ。筋に直接関係の無い形而上学的センテンスが多く、だらだらとしていて話が頭…

E・L・ドクトロウ 『ラグタイム』

歴史は語りなおされる。我々が普段何気なく認識しているそれは、不変のものであるとは限らない。歴史は大きな事実だけで語られ、細部は切り捨てられる。細部にこそ、真実が眠っている。ドクトロウは、物語によって細部を拾い上げ、大きな事実を元に、虚構と…

ノーマン・メイラー 『死刑執行人の歌』

主要登場人物表 ゲイリー・ギリモア・・・殺人犯 自ら死刑を要求する ニコール・ベイカー・・・ゲイリーの恋人 自殺未遂を起こし、精神病院に収容される エイプリル・ベイカー・・・ニコールの妹 キャスリーン・ベイカー・・・ニコールの母 スターリング・ベ…

ノーマン・メイラー 『アメリカの夢』

本書『アメリカの夢』は、元々エスクァイアに連載されていたものだ。アメリカでは、日本のように長編小説を締切に合わせ、雑誌に「連載する」という習慣がないものだから、メイラーの試みは結構注目された。ディケンズの真似ともいわれたが、本人はドストエ…

ノーマン・メイラー 『ぼく自身のための広告』

1 日本において、ノーマン・メイラーはすっかり忘れ去られてしまった。それはここ最近の出来事ではなく、30年ぐらい前から、そんなポジションに入っている。昔は、新潮社から全8巻の全集が出るほどだったのに、後期の大作(Ancient EveningsやHarot's Ghost…

ジョン・ファンテ 『塵に訊け!』

世の中には、是が非でも作家になりたいという人種がいる。そして、そんな人種が書く小説となれば、作家志望の青年(つまり自分)が主人公となるのは当然だ。ジョン・ファンテの『塵に訊け!』もそういう小説である。 主人公バンディーニは、ロサンゼルスの安…

フィリップ・ロス 『ダイング・アニマル』

フィリップ・ロスは老いてなお盛ん、いや盛んであろうとしている。ロスの描く主人公たち(限りなくロスの分身)は、作品毎に彼と同様年を重ねていくが、「老い」を素直に受け入れることができない。なぜなら、女がいるからだ。しかも、自分より二回りも若い!…