安原顯編 『私の好きな映画 ベスト5』
本書は、『リテレール』の編集長、安原顯が企画・編集したもので、「リテレール・ブックス」シリーズの中の一つだ。出版されたのは1994年。様々な文化人が、自身の好きな映画を5本ほど挙げ、そこに簡単な解説を加えている。あとがきによれば、約300人に依頼したが、原稿を貰えたのは89人だけだったとか。以下、抜粋。
スティーヴ・エリクソン
①ゴッドファーザー Part2
②めまい
①トムソン少佐の手記
①道(フェデリコ・フェリーニ)
②汚れなき悪戯
④ベニスに死す
⑤さよなら、子供たち
①舞踏会の手帖
②ニノチカ
③荒馬と女
喜志哲雄
④第三の男
⑤できごと(ジョーゼフ・ロージー)
①2001年宇宙の旅
④ストーカー(アンドレイ・タルコフスキー)
⑤ザ・デッド(ジョン・ヒューストン)
①純情二重奏
②鞍馬天狗横浜に現わる!
③赤西蠣太
④瀧の白糸
⑤丹下左膳余話 百萬両の壺
⑥ル・ミリオン(ルネ・クレール)
⑦運命の饗宴(ジュリアン・デュヴィヴィエ)
⑧白い恐怖
②ライムライト
③天井桟敷の人々
中村稔
①父ありき
②東京物語
③スティング
④日曜はダメよ
⑤女だけの都
②チャップリンの黄金狂時代
③グリード(エーリッヒ・フォン・シュトロハイム)
④マドモアゼル(トニー・リチャードソン)
⑤或る愚者有りき
①情事(ミケランジェロ・アントニオーニ)
②甘い生活
①心の旅路
④商船テナシチー
③第三の男
④野良犬(黒澤明)
⑤バンド・ワゴン
①ひかり(スレイマン・シセ)
②アントニオ・ダス・モルテス
④シテール島への船出
①居酒屋(ルネ・クレマン)
②波止場
③ヘッドライト(アンリ・ベルヌイユ)
④未完成交響楽
⑤晩春(小津安二郎)
①東京物語
③童年往事・時の流れ
⑤血とバラ
④モダン・タイムス
②ヨセフ・キリアン
⑤サンタ・サングレ
①ウィークエンド(ジャン=リュック・ゴダール)
②王女メディア
③家族の肖像
⑤陽炎座
①七人の侍
②生きる
③野良犬
④羅生門
⑤白痴
山根貞夫
①磯の源太・抱寝の長脇差
②美人哀愁
③浪人街・第一話(マキノ正博)
④狂恋の女師匠
⑤忠次旅日記・信州血笑篇
①ローラ(ジャック・ドゥミ)
②穴(ジャック・ベッケル)
⑤秋日和
①ドラルー(ルイ・フィヤード)
②我輩はカモである
③絹の靴下(ルーベン・マムーリアン)
④ハタリ!
⑤ペイルライダー
①2001年宇宙の旅
②セブン・チャンス(バスター・キートン)
③アッシャー家の崩壊(ヤン・シュワンクマイエル)
④知りすぎていた男
⑤お早う(小津安二郎)
②暗殺の森
⑤復讐鬼・新日本暴行暗黒史
①ジュピリー
②孩子王(陳凱歌)
③魔法のじゅうたん(ブリタ・ロポルスカ)
④マンドハイ(B・バルジンニャム)
⑤雨月物語
岩橋邦枝
①狂った一頁
②東京物語
④雲流るる果てに
⑤七人の侍
①抵抗〈レジスタンス〉(ロベール・ブレッソン)
①赤い風船
①自由の大地
②パジャマ・ゲーム
③ナポリの饗宴
④虹を掴み男
①我が道を往く
④攻撃(ロバート・アルドリッチ)
風間賢二
③エル・トポ
④WAX(デヴィッド・フレア)
⑤英国式庭園殺人事件
塚本邦夫
①家族の肖像
③グッドモーニング・バビロン!
④太陽の墓場
⑤テオレマ
古屋健三
①恋人たち(ルイ・マル)
④幸福(アニエス・ヴェルダ)
辻邦夫
①第七の封印
②鏡(アンドレイ・タルコフスキー)
③木靴の樹
④東京物語
⑤大地のうた
①山猫(ルキノ・ヴィスコンティ)
②家族の肖像
③麦秋
④ラヴィ・ド・ボエーム
⑤ざくろの色
別格 ゴダールの映画史
①丹下左膳余話 百萬両の壺
②白雪姫(デビッド・D・ハンド)
⑤暗黒街の対決(岡本喜八)
次席 肉体の悪魔(クロード・オータン=ララ)
①ダーティーハリー
②日曜日が待ち遠しい!
③乾いた花
④チャイナタウン
①静かなる男
②裏窓(アルフレッド・ヒッチコック)
⑤愛と精霊の家(ピレ・アウグスト)
①巨人と玩具
②キャンディマン(バーナード・ローズ)
③ゴジラ
①豚と軍艦
②飢餓海峡
③誇り高き挑戦
②誰が為に鐘は鳴る(サム・ウッド)
④第三の男
⑤生きる(黒澤明)
①アニマル・ハウス
②三千年の収穫(ハイレ・ゲリマ)
③黄色い大地(陳凱歌)
④童年往事・時の流れ
⑤野いちご
①ガス燈
②道(フェデリコ・フェリーニ)
③天井桟敷の人々
④家族の肖像
⑤田舎の日曜日
③裸の十九才
④悲情城市
⑤都市とモードのビデオノート
今福龍太
①ナサリン
②いやしがたい記憶
③光年のかなた
⑤エル・スール
①香りも高きケンタッキー
②青年たちは許さない(アブラム・ローム)
③オールド・ジョッキー(ボリス・バルネット)
④渇き(グル・ダッド)
⑤禁じられた帰郷(ニコラス・レイ)
次点 のらくら兵
③ストーカー(アンドレイ・タルコフスキー)
⑤人斬り与太・狂犬三兄弟
番外 ストレンジャー・ザン・パラダイス、初国知行之天皇(原将人)
①牡丹燈籠
②タイムマシン(ジョージ・パル)
③悪い種子
④バイ・バイ・バーディ
①悪魔が夜来る
②道(フェデリコ・フェリーニ)
③泥棒成金
④トラヴィアータ──1985・椿姫
⑤2001年宇宙の旅
和田忠彦
①おろかな鳥とかわいい小鳥(ピエル・パオロ・パゾリーニ)
②タタール人の砂漠(ヴァレリオ・ズルリーニ)
③女たちのテーブル(マーリオ・モニチェッリ)
④赤いシュート(ナンニ・モレッティ)
①羅門光三郎主演のチャンバラ映画
②海を渡る祭礼
③今ひとたびの
④獣の宿(大曾根辰夫)
⑤猿飛佐助(安達伸生)
粟津則雄
①望郷(ジュリアン・デュヴィヴィエ)
②舞踏会の手帖
③女だけの都
④自由を我等に
①アマルコンド
⑤銀河(ルイス・ブニュエル)
①風の物語(ヨリス・イヴェンス)
②時を数えて、砂漠に立つ(ジョナス・メカス)
④シテール島への船出
⑤軽蔑(ジャン=リュック・ゴダール)
①舞踏会の手帖
②乙女の墓
④ライフ・レッスン
⑤ウォリアーズ(ウォルター・ヒル)
上野昂志
②鴛鴦歌合戦
①いやしがたい記憶
③バイバイ・ブラジル(カルロス・ジエゲス)
⑤アンダルシアの犬
①妖精カラボス
②エマック・バキア
③操行ゼロ
④アルチバルド・デ・ラ・クルスの犯罪的人生
スティーヴ・エリクソンのベスト5は、本書のために書いたものではなく、LA Weekly, January 8-January 14,1993に載った"The 30 Best American Movies Ever"の翻訳だそうだ。だから本当はオールタイム・ベスト30なのだが、エリクソンがその時寸評を書いた映画というのが、本書に抜き出してある5本ということらしい。
蓮實重彦は、「蓮實重彦がこの世に誕生していらい、その作品が一般公開されてはいないこと」など、他四つの条件付で、オールタイムベストを選出している。
平川祐弘はベスト5ではなく、パリ留学時代にエキストラとして出演した映画『トムソン少佐の手記』について書いている。これはダニノスのベストセラー小説を映画化したものなのだが、日本だけでなく、英・仏でもソフト化されていないようだ。芳賀徹はパリで見たらしいが、平川自身は見ていないとのこと。一度見てみたいが、DVD化されないものだろうか。