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HOOTERSにうってつけの日

赤坂のHOOTERSに5時間いてみろFOODが旨えのは最初のHALF TIME
ショーまで後はソースをペタペタさせたり拭いたり繰り返すだけの幼児退行
ひでえよSHIT!

Jazz Dommunisters「Food」

  

 花の金曜日。待ち合わせ場所である飯田橋に同い年の友人Mがやってきた。Mは証券マンで、俺は無ショ……いや、何もしない活動「何活」の実践者である。
二人には共通点がある。生まれてから25年間、恋愛の難民キャンプに収容されていたことだ。だから、考えていることは女のことしかなかった。「どうする?」「フーターズにでも行ってみるか」。性欲は決断を早める。
 新宿のフーターズは郵便局の裏にある。目の前には薬局。金曜だが、あまり人通りは多くない。路地に入ると、あの有名なフクロウの看板がすぐに目に入った。店は地下にあるようだ。階段を降りると、灰皿だけ置いた喫煙所。ブルーのスーツを着た兄ちゃんが目をぎらつかせながら煙草を吸っている。
 俺たちは唾を飲み、こなれた雰囲気を出しながら中に入った。自動ドアをくぐるとすぐに受付があり、右手にはバーカウンター。そこからさらに階段を降りると広いフロアがあるのだが、金曜の夜だけあって混雑していた。受付にいたお姉さんは、例の白地に「HOOTERS」のロゴが入ったコスチュームではなく、確か黒地のコスチュームを着ていたのだが、胸が強調されていることは変わらず、受付の間、視線がエレベーターのように顔と胸の間を上下した。「混んでいるからバーカウンターならすぐに案内できます」と言われたが、バーカウンターでの振る舞い方を当然二人とも知らないので、インテルのCMのような低い落ち着いた声で「大丈夫です」と答え、フロアに空席ができるまで待つことにした。結構待つのかと思ったが、15分ぐらいで席に案内された。
 会社員が多かったが、外国人客もちらほら。女性だけで来ているグループもあった。店員の女性が主体的・能動的に働いている感じが、キャバクラと違って、同性にもうけるのだろう。
 店内には爆音で音楽がかかっており、会話するのに少し苦労するほどだ。天井からは巨大な飛行船がつりさげられ、テレビはCSのスポーツ番組を垂れ流していた。注文をとりにきたフーターズガール(おっぱいがでかい)に、友人がやや上ずった声で「おススメはなんですか」と聞いた。「えーと、チキンウィングとチリチーズカーリーフライを頼む人が多いですねー」と言われたので、その言葉に素直に従う。フレンドリーな感じで接客するのが、フーターズの決まりらしい。童貞の僻みか、馬鹿にされているのではないかとも思ったが、これは気のせいだろう。
 隣の席では、若手IT社長とその部下、社長の彼女と思われる3人組が異様にはしゃいでいた。フロアを動き回っているフーターズガールの一人をしょっちゅう呼び止め、挙句の果てには、記念写真を撮る時、肩に手を回そうとし、「さわるのは駄目なんですよ」とたしなめられていた。俺と友人は手を油で汚しながら、黙々とチキンを食べていた。
 9時になると照明が少し暗くなり、ショータイムが始まった。カントリーのような曲が数曲爆音で流れた後、ヴィレッジ・ピープルの「YMCA」になった。酔っぱらった客の姉ちゃんが一緒に踊ろうとして店員から止められていた。サビの部分では客も一緒になってあの「YMCA」の振り付けをやった。おっさんがYMCAの振り付けをすると、否応なくキャバクラのような雰囲気が出る。俺もやったが、手旗信号のようにかくかくしていた。
 その後、もう一度ショータイムを見てから、席を立った。10時を過ぎていた。性的なものを中途半端に摂取したことが、逆に欲求不満に繋がった。非日常的な世界に没入するにはある種の陶酔が必要だが、自意識の強さから、常に冷めた状態でいた。だから、ひたすら違う世界の住人であることを自覚させられるばかりだった。店の外に出ると、小雨が降っていた。

 

BIRTH OF DOMMUNIST(ドミュニストの誕生)

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